【炎上】あの女子高生家畜CMなんて甘い! 藤子・F「ドラえもん」風ダーク漫画を見よ!

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藤子・F・不二雄著「ミノタウロスの皿」
藤子・F・不二雄著「ミノタウロスの皿」

「濃いミルクを出し続けるんだよ…」

 確かにインパクトはある。いまネットを中心に世界的に炎上しているブレンディ(注1)のウェブCM「挽き立てカフェオレ『旅立ち』篇」のことだ。公開されたのは昨年11月末だが、海外の広告賞を獲得したことで英語字幕版が作られて、拡散。「この日本のCMキモイよ」と海外から批判の火の手があがり、逆輸入される形で日本でも大炎上中なのだ。

——ごく普通の卒業式風景。人生の門出に期待と不安でいっぱいの高校生たち。しかし彼らの顔には<鼻輪>が。そして次々と呼ばれて、卒業証書(注2)と共に、就職先が校長らしき男から告げられる。元気のいい男子はロデオパークへ、華のある女子は動物園へ、食肉工場らしき会社を告げられた男子生徒は荒れて暴れる。そんな中、必死の努力をしてきた(かなりバストの大きい)女子生徒は、就職先を<ブレンディ>と告げられて感涙にむせぶ。校長はニッコリ笑って、冒頭の「濃いミルクを…」というセリフを吐く。

 一見して「ああ牛を擬人化して、高校生風に描いたんだな」というヒネリは、分かる。しかし、何とも言えない不快感を覚えた人が多かった。

「何これ、ものすごく気持ち悪い。なんの宣伝なのか」
「日本の管理社会の風刺? ただのサブカル自己満足に見える」
「巨乳の女の子が胸をユサユサさせたり、“濃いミルク出せ”とか、ただのエロ」

 などなど。ネットを中心に非難轟々なのだ。

藤子・F・不二雄の毒

 ところで、この手の<家畜擬人化><人間家畜化>をテーマにした作品といえば、傑作がいくつかある。小説(注3)では沼正三の『家畜人ヤプー』、漫画では藤子・F・不二雄の『ミノタウロスの皿』(注4)だろう。特に『ミノタウロスの皿』は人間そっくりの<ウシ>が出てくるだけに、このCMの製作者も参考にした可能性大だ。

——主人公は宇宙船の事故で、中世の地球によく似た惑星に緊急着陸する。ミノアという美しい娘に救出され、恋心も抱くようになる。 しかしこの星の支配者は牛そっくりの<人類>で、地球人と同じミノアらの方が、<ウシ>と呼ばれる彼らの家畜だった。ミノアは大祭で活け造りにされて、食べられることが運命づけられていた。

 という『ミノタウロスの皿』は、あらすじだけでも背中が寒くなる設定。これを『ドラえもん』や『キテレツ大百科』といった児童向け作品と同じタッチで描くことで、よりシュールな恐怖感が増した。

 ……ブレンディのCMと『ミノタウロスの皿』。人間と牛の立ち位置の倒置という仕掛けは同じでも、志と効果が違っている。

 残酷とエロスの異化作用で商品名の刷り込みを狙ったブレンディのCMは、残念ながらそこ止まり。一方かわいい絵柄で描かれながらも、人間が家畜に用いている身勝手な論理、動物愛護という名のエゴ、肉食という業(ごう)について深く考えさせられるのが、『ミノタウロスの皿』だ。

 ブレンディのCMを見てもミルクやカフェオレを飲むことに何のためらいも生じないが、『ミノタウロスの皿』読後はステーキや焼肉を食べる手が止まる。いまCMに炎上している方々も、より深く考えるためには必読作品ですよ!

(注1)ブレンディ…AGF(味の素ゼネラルフーヅ)のコーヒーブランド
(注2)卒業証書…CM中の表現は「“卒牛”証書」
(注3)『家畜人ヤプー』…いろいろとイワク付きの作品。石森プロなどによって漫画化もされている。
(注4)『ミノタウロスの皿』…1969年「ビッグコミック」(小学館)に初掲載された。

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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