【中国】邦人スパイ疑惑は捏造か…日本人が拘束されたワケ (1/2ページ)

デイリーニュースオンライン

なぜ中国は突然、日本のスパイ疑惑を訴えだしたのか? (C)孫向文/大洋図書
なぜ中国は突然、日本のスパイ疑惑を訴えだしたのか? (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。2015年10月11日、50代の日本人女性が、スパイ活動の容疑で中国の上海市にて拘束されたことが判明しました。9月30日にも3人の日本人が同じ容疑で拘束され、そのうちの2人はいまだに身柄を解放されていないと伝えられています。さらに、10月28日には6月に上海市で身柄を拘束された日本人女性を中国当局がスパイ容疑で「刑事拘束」したことを中国大使館が発表、拘束が長期化する可能性が出てきました。

 この事態に対し、日本政府の菅義偉官房長官は「我が国は絶対にそんなことはしない」と日本側によるスパイ活動を否定しましたが、中国の各メディアは日本のスパイ疑惑を大々的に報道しています。

 10月13日には「鳳凰衛視」(フェニックステレビ)においては以下のように報道されました。

「今回の逮捕は氷山の一角。実は以前から大勢の日本人スパイが中国国内に潜伏しており、尖閣諸島問題や人民解放軍の軍事機密、中国と北朝鮮の関係など、あらゆる情報を収集している。日本人スパイは普段は民間人に偽装しているため摘発が難しく、今後もスパイ活動の継続が不安視される」

 また中国政府の機関紙「中国青年報」においては、「中国国内には少なくとも50万人の日本人スパイが工作している」という内容を、およそ8ページにわたって特集しました。2015年現在、中国に住む日本人は外務省の発表によれば14万人程度だというのだから、この報道には呆れるよりほかありません。日本人の皆さんはバカバカしいと思うでしょうが、少なくない中国人たちは、この話を事実としてとらえ、警戒感を募らせているのです。

 なぜ、突然中国側が日本のスパイ疑惑を訴え出したのでしょうか。僕は国内の法案の変化が要因だと考えます。中国では2015年7月に「新国家安全法」が可決され、スパイ容疑の定義が広がりました。そこで実際に逮捕する事例を生み出すことにより、「中国でこのようなことをすると、スパイとして逮捕するぞ!」と示したかったのでしょう。

 それは日本のみならず、中国共産党の独裁体制に反対する中国国民に対する示威も存分にあるかと思います。中国には「見せしめを行う」という意味の、「鶏を殺して猿を脅す」ということわざがあるのですが、中国政府はまさしく日本人を見せしめとして利用しているのです。

スパイ事件の捏造は中国のお家芸

 今回に限らずプロパガンダのためのスパイ事件の捏造や誇張は、毛沢東時代から続く中国政府の常套手段です。

 例えば文化大革命時代は中国国民が香港や台湾に住む親戚に手紙を送ったことが発覚すると、スパイの罪がかけられ処刑されました。僕が子供の頃、当時アジア中で大人気だった台湾人歌手テレサ・テンは、「台湾省によるスパイ」と中国では報道されていました。

 中国国内のネットを閲覧すると、今回の事件を受け「政府の発表は信ぴょう性が薄い」と冷静な分析を求める世論もありましたが、そのような意見に対して「貴様は中国人になりすましている日本人だな!中国から出て行け!」といった反論が飛び交ったり、「日本鬼子は再び侵略戦争を行うために、スパイを送り込んでいるのだ!」とか「爆買いしている中国人は、日本に国内の情報を売っている」といった感情的な陰謀論が大量に書きこまれていました。どうやら外国勢力が国内でスパイ活動を行っているという話は、多くの中国人に刷り込まれた認識のようです。

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