吉田豪インタビュー企画:紀里谷和明「『CASSHERN』ファンもいるのに隠れキリシタンみたいに…」(1) (3/5ページ)

デイリーニュースオンライン

音楽に関してはいつかはケリをつけないといけない

──全然関係ないですけど、紀里谷さんがアメリカに行ったときCBGB(※ニューヨークの有名ライブハウス)とかで音楽活動をしてたらしいじゃないですか。

紀里谷 ハハハハハ! はい。

──どんな音楽をやってたんですか?

紀里谷 あのね、いま聴いても結構ハイクオリティなものでしたよ。誰みたいって言えばいいのかな? 僕、デヴィッド・シルヴィアンとかすごい好きで。

──JAPANの。

紀里谷 JAPANよりもデヴィッド・シルヴィアンのソロ。だからLUNA SEAのSUGIZO君とすっげえ話が合うんだよ。あの人は自分のこと「デヴィッド・シルヴィアン博士」って言ってるんだけど。それとか、ご存知かわからないけどコクトー・ツインズとか。

──もちろん知ってますよ。

紀里谷 ディス・モータル・コイルとか、ああいうものが大好きで。

──むしろアメリカじゃなくてイギリス側だったんですね。

紀里谷 そうそう、イギリスの4ADとかラフ・トレードとか(※どちらもレコードのインディーズレーベル)、そっち系。わかります?

──もちろん!

紀里谷 おぉっ! バウハウスとかで始まって、そこらへんがすごい大好きで聴きまくってて、その延長線上の音楽みたいなことやってて、かなりハイコンセプトだったんですよ。

──ものすごい聴きたいですよ。音源ないんですか?

紀里谷 どっか探せば出てくると思うけど。バンドメンバーも坂本龍一さんのバックバンドでギター弾いてた人だったり、ラウンジ・リザーズのベースだったり、結構ちゃんとやってたんですよ。しかしながら続けなかったんですよね。唯一そこだけが、僕がちゃんとやってないことですね。

──ほとんどの夢を叶えてきたけど、そこだけが。

紀里谷 叶ってない。一番最初に唯一やりたかったことができなかった。だからたぶん自己分析をすると、好きすぎちゃって手も足も出ない感じ? 写真とか映像だったら門外漢というか、自分はそもそもそれをやる人間じゃないっていう思いがあったから、なんとなく「これぐらいでいいんじゃない?」「そこに俺自身は投影されてないからいいじゃん」っていう思いがあって、バンバン作品が発表できたわけですよ。

──だけど、音楽だとこだわりすぎちゃう。

紀里谷 そうそう、コード進行ひとつ取ったって、「こっち? これじゃ……いや、ちょっと待って」みたいなことを延々やるわけですよね。音ひとつにしても、すごいプログラミングしちゃうし。結局のところ、曲を作り始める前に音源を作るだけでヘトヘトになっちゃうみたいな領域で、最後のほうは手も足も出なくなっちゃってました。あれなんなんですかね?

──好きすぎるのも良くないんでしょうね。

紀里谷 映画も5年に1本しか作れないっていうのは、結局そういうところがあって。PVとかだったら、いわゆる雇われ仕事じゃないですか。写真もそうですけど。発注があって、それに何かを提案するっていうお仕事だからできるんですよ。

──対象にそこまでの思い入れがなくても作れますからね。

紀里谷 そう。映画とか音楽になってくると、自分がそこに映っちゃうっていう、その恐怖なんだと思うんですよ。それは音楽のほうが大きいです。

──映画を作るとき、自分で曲もやるぐらいのタイプに見えますもんね。

紀里谷 そうそう。それはやらなきゃなと思ってるんですよ。

──いずれケリをつけなきゃいけない。

紀里谷 そう、ケリをつけなきゃいけないとずっと思ってる。だから、次の作品は音楽を先にやろうと思ってて。

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