【テロ対策】「国際対テロ情報収集ユニット」で国民を守れるのか (1/2ページ)

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イスラム国のテロは防げるのか?
イスラム国のテロは防げるのか?

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貧弱すぎる日本の対外情報機関

 何の罪もないパリ市民130名の殺害を含む、計481名の死傷者を出した過激派組織「イスラム国」による無差別テロは、改めて世界中を震撼させた。日本は地政学上、中東から遠く離れた島国ということもあり、イスラム教徒も少ない。入国管理体制がしっかりしていることなどから、イスラム過激派による凶悪なテロなどとは縁遠いようにも思われる。

 だが、果たしてそう言い切れるであろうか。或る軍事アナリストは「イスラム国掃討のための空爆を繰り返す米国主導の有志連合の一翼を担う日本もまた、テロの標的になり得る」と警鐘をならすが、無視できない意見だ。安倍総理は外遊の際、イスラム国と戦う周辺諸国への経済支援を約束しているのだから「敵視」されてもやむを得まい。ましてや日本は2016年5月に伊勢志摩サミットを、2020年には東京オリンピックを控えている。オリンピックは恰好のテロの標的になりやすく、対岸の火事とばかりは言えないのである。

 従来、戦争というのは、「国家対国家」の武力衝突を意味したが、2001年の9・11の「米同時多発テロ」以来、戦争の概念が変わり、国と凶悪な犯罪組織との紛争をも含めるようになった。これを「非対称戦争」と呼ぶ。「非対称戦争」の難しさは目に見えない脅威であることと、まともな国家とは違い、およそ対話など成り立たないことにある。法政大学の田中優子総長やテレピ朝日の「報道ステーション」のキャスターの古館伊知郎氏などは「イスラム国との対話が必要だ」などと宣っているが、平気で首を切り落とし、戦車で圧殺するような狂気の集団に対話なと成り立つわけがない。

 では、日本は「イスラム国」のような凶暴な犯罪組織にどう対処すべきなのであろうか。警視総監を務めた前内閣危機管理監の米村敏朗氏は『読売新聞』のインタビューに対し「日本は国境審査で水際対策が可能で、まだイスラム原理主義過激派の支援組織ができる状態ではない」と指摘するとともに、水際対策の徹底と対テロ情報体制を充実させ、情報の集約と分析が重要」と説く。さらにインテリジェンス機関を構成する人材の養成の必要性を強調する。

 安倍総理もパリ同時多発テロを受け、情報収集強化のための「国際テロ情報収集ユニット」について「12月上旬にも設置する」と明言した。政府は当初、防衛省や警察庁からの出向者ら20名程度で構成する同ユニットを2016年4月に外務省に新設する方針だったから、約4か月前倒しする形だ。

 だが、はたしてその程度の組織でテロ対策として十分なのだろうか。安倍内閣は先に特定秘密保護法と国家安全保障会議(日本版NSC)設置法を成立させたが、NSC設置に向けた有識者会議では「日本も本格的な対外情報機関を設けるべきだ」との意見が相次いだ。「国際テロ情報収集ユニット」はそれを受けてのものだが、組織の規模から言ってもいかにも貧弱だ。

 ちなみに日本の情報機関には核となる内閣直属の内閣情報調査室(約170名)、法務省の外局の公安調査庁(約1530名)、警察庁警備局公安課(約1000名)、警視庁公安部(約2000名)などがある。このうち米国CIAのカウンターパートとなる内閣情報調査室は、次官級の内閣情報監を室長に国内、国際、経済の三部門に分かれ、各々約50名体制で、全体で約170名しかいない。多くは警察庁をはじめ各省庁からの寄せ集めで、古巣との「併任」も多く、いかにもとまりがない。

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