中国政府の過激化する”言論弾圧”を日本の大手メディアが報道しないワケ (1/2ページ)

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中国国民の多くは民主化を望んでいる!? (C)孫向文/大洋図書
中国国民の多くは民主化を望んでいる!? (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。2015年12月14日、中国の著名な人権派弁護士、浦志強の初公判が行われました。人権派弁護士とは、政府からの横暴に対する民衆の擁護、反体制的な市民団体やアーティストに対する支援など、中国の民主化を推進する弁護士たちの総称です。

 浦弁護士は、かつて中国で「六四天安門事件」が発生した際、ハンガーストライキ(デモの手法、飲食を断つことにより相手側に意思を伝える)を決行した実績があるため、以前より中国政府から危険視されている人物です。

民主主義の使者・浦志強弁護士

 弁護士としての実績をあげると、「労働再教育制度」(中国政府から反乱分子とみなされた人物に強制労働を行わせる制度)の撤廃推進、農村部に戸籍を持つ子供が都市部の学校に進学することを許可する法律の立案、実名によるネット上での中国政府の元高官・周永康の不正問題の糾弾、娘が政府の役人に強姦された疑惑のある女性の弁護など多岐にわたり、まさに中国における「民主主義の使者」といえる人物です。

 このような人物を独裁的な中国政府が放置しておくはずはありません。2014年ごろから、中国当局は国内の人権派弁護士たちを次々と拘束・逮捕し、その中には浦弁護士も含まれていたのです。彼の逮捕の理由は、中国のSNS「微博」に中国政府を批判する内容の書き込みを行ったというものでした。実際に浦弁護士の書き込みを見てみると、

「中共はウイグル自治区を完全な植民地として扱っている。これは実に荒唐無稽な国策だ。仮に中共が自治区に対し侵略行為を行い、その結果ウイグル人たちが報復攻撃を行ったとしても、ウイグル人たちは一方的に弾圧されるだろう」

「『昆明テロ事件』を引きおこしたウイグル人たちの罪は、確かに許されるものではない。だが、中共の民族弾圧が原因となり彼らはテロを行った。この事件の元凶は中国政府の圧政だ」

「中共擁護者たちは私を漢奸売国奴と呼ぶ。私はそう侮辱されてもかまわない。なぜなら私は中国政府を否定しているからだ。中共擁護者たちは私に中国政府の現体制を素直に受け入れろと要求している」

 といった内容でした。これらの言葉はまさしく正論ですが、中国政府は彼を「民族の団結を破壊し、社会に悪影響を与えた」人物とみなし、14年5月に逮捕したのです。

 中国政府の「言論弾圧」ともいえる行為に、多くの中国国民が反感を抱きました。ネットの情報によれば、浦弁護士の初公判の日、北京市内の裁判所の前には100人以上の人が集まり、浦弁護士の無罪放免を叫んだり、「中国の憲法には言論の自由が保障されている!」「みんなで力を合わせれば中共なんて怖くない!」などと、政府を批判する垂れ幕を掲げたりしたそうです。

 中には「みんなマスクをつけましょう」と訴える人もいました。おそらく北京の大気汚染に注意しろという意味でしょう。警察は暴力を用いて彼らを抑制したそうですが、悪環境の中、長時間にわたり抗議を行った彼らに僕は多大な敬意を払います。

 現在、中国国内では浦弁護士の裁判については報道規制が敷かれています。ネット上では彼のことは検索不可となっており、裁判の内容は機関メディアによる偏向したものしか報道されていません。それにも関わらず、国内のネット上には裁判の詳細な記録が100件以上投稿され、とあるBBSでは無罪判決を願い、ユーザー78人のアイコンを浦弁護士の写真に変更したそうです。

 これらは全てネット検閲に引っかかり削除されましたが、多くの人々が浦弁護士の裁判に強い関心を持ち、彼の釈放を願ったのです。これは中国国民の大半が自国の民主化を望んでいることの表れではないでしょうか。

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