日韓「従軍慰安婦」解決交渉の是非で審議中でござるの巻|やまもといちろうコラム

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画像はフェイスブックより
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 山本一郎(やまもといちろう)です。まだ仕事が納まりません。私にとっての年末休暇はいつくるのだろうと思っておりますが、良く考えたら2014年も2013年も31日までなんだかんだで働いていたことを思い出しました。2016年は休めるような人生を送りたいです。

 ところで、表題従軍慰安婦について、日韓間の交渉がまとまったぞということで大きなニュースとなって飛び込んでまいりました。長年の懸案であったことも踏まえると、頃合としては良かったんじゃないかと思っております。

慰安婦問題めぐり日韓合意 「最終的かつ不可逆的解決」(朝日新聞 15/12/28)

 話を見ていますと、事前に世論操作的なリークは日本側、韓国側ともに乏しく、そこまで事前に何で交渉されるのかの細目までは見えていなかったことを考えると、そこそこ両国も真面目に着地させる意図で頑張って交渉を積み上げてきたんだろうなあと思うところであります。まずは官邸、外務省、NSC、その他関係者の皆さま、年末間際に至る交渉お疲れ様でした。

 で、問題の根幹である「韓国社会で従軍慰安婦問題を騒いでいる人たち」については、今回やはり余波があるようです。

元慰安婦「すべて無視する」と反発(産経新聞 15/12/28)

 韓国ネタではいろいろ因縁のある産経の記事ですので何割か割り引いて読むにしても、やはりそういう話があるのだとするならば、これらの人たちのお陰で過去日本政府が女性基金含め様々な補償手段を提案してきても、成立してなお「誠意が足りない」と反発して、日本の戦後保障が不充分であるかのような国際的中傷の核となってきたことは否めません。

 もちろん、立場的にどうしても引きずる部分があるのは心情的に慰安婦の方々もあるのだろうという理解はできるものの、ある意味で「どこまで謝罪すれば気が済むのか良く分からない」「いったん落着したはずの問題が、ふたたび関係者の蒸し返しで振り出しに戻ってしまう」ことを日本側も気持ちとして感じてきたのが慰安婦問題です。今回の10億円という、国家対国家の話し合いでは文字通り「はした金」での決着であったとしても、納得のいかない日本人がそのぐらいの金額でさえ払うべきではないと主張するのもまた、この問題のややこしさを際立たせるものです。

「心からお詫びと反省の気持ち」と言っても……

 交渉の果ての全文については、すでに各所で掲載されていますが、正式な外交発表での合意内容はWSJのものを見る限り、韓国は韓国なりに困惑と忸怩たるところを持ちながらも、問題の解決に相当な苦労を経て踏み出した様子は見えます。

Full Text: Japan-South Korea Statement on ‘Comfort Women’

 これは、裏返すと「韓国政府は、韓国国内の世論が如何に跳ね返ろうとも、”国として”これらの従軍慰安婦問題を対外ロビーの具に使うことはむつかしくなった」という意味です。いわゆる国際的な関心事である日韓関係のイシューとしての従軍慰安婦問題は、日韓政府間では解決済みであり、もしも外国で従軍慰安婦問題で韓国系が暴れていたとしても、それは韓国政府の国内問題としてきちんと対処しますよ、と蓋をしたという話になると思います。

 もちろん、これはこれで「そうは言っても、日本は果たすべき約束を履行しなかったので、この日韓政府間合意は無効だ」と蒸し返される可能性は当然ありますし、それは少なくないかなあと感じます。まあ10億円で韓国政府の誠意を引き出し可能性を「買った」と考えれば、韓国政府が法的賠償の旗を下げたことで時間稼ぎにはなるのだろう、次問題になるころには本人問題としての従軍慰安婦はその高齢による死亡と共に真の意味での歴史になっていてくれるかもしれない、という意味で良いのではないか、と。

 というところで、NHKから次のような話が出ました。

日韓合意で専門家 一定の評価も「予断許さず」(NHKオンライン 15/12/28)

 これをもって落着とはいえないまでも、いままでさんざん慰安婦問題が日本国内での反発を呼び起こして、「慰安婦が大金を稼いだ」「ゆすりの材料に慰安婦問題を使っている」と日本国内で声高に発信され続けたあとで、安倍晋三首相が「心からお詫びと反省の気持ち」と言っても、向こうには響かないのは承知のうえでしょう。

 結局、外交であって民事の契約ではない以上、民意が反発すればまた元の木阿弥になることも覚悟のうえで、ゆったりとした気分でフォローアップ事業の内容を観察するのが良いのではないかと感じました。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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