”民泊”などのシェアリングエコノミー関連で怪しい詐欺話が勃発|やまもといちろうコラム

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シェアリングエコノミーはどこへ向かうのか(写真はイメージです)
シェアリングエコノミーはどこへ向かうのか(写真はイメージです)

 山本一郎(やまもといちろう)です。最近、足の指になぜか血豆ができて、これは飛行機や新幹線に乗りすぎによるエコノミー症候群の症状なのではと恐れおののきながらビールを飲む日々です。といっても、酒はかなり減らしましたが。

 ところで先日来、訪日観光客の急増もあって、東京や京都、大阪などのホテルが取りづらいという問題が続発していますが、新規ホテル開業のようなものよりも、AirBnBなどに代表される民泊を認める経済特区を作って、空き部屋を提供すればいいんじゃねという流れになってきております。

 しかしながら、ご存知のとおり民泊を認める特区を作って、効率的なシェアリングエコノミーを制度化しても、部屋を貸し出して収益を得る部屋主と、単に日々住み暮らしている住民の間では利害関係が異なります。民泊に“感染”したタワーマンションは不特定多数の人たちが「ホテルより安いから」という理由でそのマンションの部屋を借りにくるわけですから、ガラが良い人たちばかりだとも思いづらいわけです。

 そうなると、マンション自体の資産価値が下落したり、悪い風評が起きたり、場合によっては事故物件になってしまう危険性もあることから、マンションの資産価値を保全したい住民の多いマンションは、管理組合の規約を変更して無断でシェアリングエコノミーの対象とならないよう制限をかけることになります。

マンション・チラシの定点観測

■民泊事業の金融商品も登場

 一方、これらの民泊事業に将来性があると踏んだ投資家グループが、金融商品として民泊事業への投資を呼びかける営業を始めていて、関心を呼んでいます。まあ、実際私のところにも営業があり、身の回りにもそういう投資話の利回りのよさを見て、リスク承知でお金を入れてみようかと画策している人たちもいて非常にカオスです。

 その売り文句を見てみると、東京都下や埼玉県、神奈川県などで、すでに住民が少なくなって物件利回りが低下し、売りに出ている安くて古いアパートを民泊用長期ステイの場として提供するという、何ともいえない投資案件が鈴なりになっていて涙を誘います。

 それは、単純にもともとがアパートだったというだけで、国家戦略特区の特例があったとしても、旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる」継続的な営業行為とする旅館業法の対象とならざるを得ません。これがただの仲介だ、ニーズにあった部屋を探すサービスだという話ならば、「外国人滞在施設経営事業」の認定も下りると思いますが。

 また、現在急増して社会問題になっている空き家対策の一環として、これらの民泊を活用して来日客の宿泊需要で埋めようというファンドも立ち上がっているようです。こちらはマンションでない分だけ、少し筋は良いのかもしれませんが、特区ビジネスの常として「問題発生即制度変更」の対象となったとき、いったんは利回りは良くとも何かあったときの損害賠償だの制度変更後に糞のような利回りに転落するだの、やはりリスクは強く感じる物件なのであります。

 ここで思い返していただきたいのは、この手の「金融商品」の先駆けとなった、いわゆる「ラブホテルファンド」です。

【トラブル】ラブホテルファンドHOPEが償還停止

■シェアリングエコノミー投資には問題点も

 いまだに高利回りで運営されているラブホテルファンドもあるようなので、一概にこの手のビジネスが駄目だというつもりもないのですが、まともに運営しているはずなのに問題を引き起こすタイプのラブホテルファンドは共通していて、それは「物件を買う」「又貸しで本来の権利者が別にいる」ケースです。というか、すべてのファンドの内情に精通しているわけではありませんが、本丸で稼げるラブホテルに周辺のどうでもいいラブホテルをぶら下げて、全体の売上の規模感を保ちながら投資家を募り営業を助成したりしながら採算を取っていく事業モデルという点では、民泊の各種事業者や仲介業者と似たところがあります。

 ところが、このシェアリングエコノミー投資の問題点は「もともと空き家や長期不在などで部屋が空くので、それを貸す」という元手がほとんどかからない前提で成り立っていたはずが、民泊ファンドもラブホテルファンドも「物件を買い、また仲介に金を払ってファンド運営する」という点で、物件を仕入れて運営しなければならないわけです。

 なので、民泊ビジネスで適法に収益を上げようとするならば、あくまで野良のユーザーに空き家を登録させ、そこへの送客、仲介に限定してビジネスが回せなければ旨みがないどころか、リスクが大きいということになります。この手のビジネスでCtoCだから「ただ俺たちは業として宿泊希望者を仲介して、空き家登録してくれた人の家に送っただけだからね」と言いたいところですが、そこで乱痴気騒ぎを起こして裁判沙汰になったとか、盗品が出たとか、傷害事件が起きたといったとき、当然仲介業者の責任が無しとはいえなくなってしまいます。この点は、フリマアプリの構造的欠陥と同様です。

■民泊の“危険性”はどう解消すべきか

 シェアリングエコノミーは私自身も推進したほうが良いという立場ですが、その運営においては既存法の成立の理由にまでしっかりと立ち入って、「法律ができた当時、何が問題だったからその規制が敷かれたのか」をきちんと吟味する必要があると思うのです。例えば旅館業法において、潜りの旅館業者が掃除を怠り衛生状態が悪くなって水虫のような軽微なものから結核のような伝染病まで発生していたので、簡易宿泊においても業として行う場合には登録が必要であるという流れになったと記憶しております。

 ここには長い戦いの歴史があり、業としての宿泊といったとき、夜間営業もし実際に宿泊させられる機能も完備しているネットカフェや漫画喫茶がどういう法的な立て付けになるのか、また、その場合は業として求められる「宿帳」システムをどう管理するのか、といった様々な調整があって現在にいたっているわけです。

 そこへ、外国人宿泊客の需要があるからと言って、本人確認も満足にできないような民泊仲介サービスがネットで簡便に行われたとき、どのような影響を及ぼすのかは、ある程度想像力のある人からすれば分かることではないかな、と思います。

 したがって、これ界隈は残念ながら「事件待ち」になっているところがあり、以前にもこの連載で書きましたけれども、安全管理や宿泊者の素性をきちんと確かめられるすべがあるといいのですが。

【中国籍女児マンション転落死】宿泊仲介サイト「AirBnB」が関係か|やまもといちろうコラム

 この辺は、あんまり華やかにやりすぎると痛い目に遭う方面なので、個人的には需要の盛り上がりに応じて国民の間でしっかりと議論を積み重ねながら、徐々に丁寧に対応していくのがベストじゃないかと思うのですが、如何でしょうか。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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