【ネットニュース編集者によるイニシャル鼎談】SMAP解散報道の舞台裏

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SMAP解散報道の舞台裏が語られる
SMAP解散報道の舞台裏が語られる

山本一郎×中川淳一郎×漆原直行のイニシャル鼎談vol.4

 年明けから大きな芸能ニュースが続き、ネットニュース業界の賑わいが加速している。そこで、ネットのトレンドを知り尽くしたブロガーの山本一郎氏、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏、編集・ライターの漆原直行氏の3名にご登壇いただき、第2回トークイベントを開催。ニュースの舞台裏を語り尽くすその一部をレポートする。まずは、日本中に衝撃が走ったSMAPの解散騒動から。

※前回のトークイベントレポートはこちらから
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■SMAP解散報道の真相とは

山本一郎(以下、山本) このSMAP関連の報道って結構興味深くて、解散報道後に色々と新たな情報が出て来るけど、何しろメリーさん本人や関係者が実名で登場したものだから、週刊文春と週刊新潮が首根っこを押さえられて、ジャニーズ側の言い分を流すメディアになってしまった。で、音楽系の事業者組合の人と話をしていたら、芸能事務所『T』の会長が間に入って、芸能事務所大手『K』に移籍するって話になっていたらしいんです。

中川淳一郎(以下、中川) 『T』に入るんじゃなくて?

山本 あくまで『K』で引き受けるって話になったんです。そもそも、SMAP解散のきっかけが文春のインタビュー(2015年1月13日発売の『ジャニーズ女帝怒りの独自5時間』)。あれ、マジで5時間だったんです。で、その時に喜多川さんがだんだん怒り始めて、もちろん記者の煽りもあったとは思うんですけど、最初1時間だったのが、2時間になり3時間になり、そうしている間に怒りはじめて、SMAPのマネージャーの飯島を呼べって話に発展して、本当に飯島は呼ばれるんですよ。そこで、あなたSMAPの5人連れて出て行きなさいって言ったんです。これが、今回のSMAP騒動の本当のきっかけ。だから、その意味で火を放ったのは文春なんです。

漆原直行(以下、漆原) さすが文春ですね。また文春か。

山本 呼び出された飯島さんは、これは本当にいられないって判断をして、SMAPとキスマイを連れてジャニーズ事務所からの独立をするための交渉に入るわけです。9月に実際に双方の弁護士を連れて、独立の合意をしたそうで。そこできちんと独立について方向性も含め合意されたにも関わらず、一人が途中で寝返るんですよ。

中川 工藤静香……。

山本 本当に工藤静香がどこまで言ったのかはよく分かりません。でも、メリーさんのとこに謝りに行きなさいって話になって、で、それを仲介したのがこれまた『T』会長。仁義はちゃんと切りなさい、という話ですから、それは分かる。で、木村拓哉さんは、揉めた後や謝罪会見の時に橋渡しをしたっていう、そういう話になっていくんですよ。でもね、僕らからすると強い懸念があって、2015年1月に、文春の取材の最中にエキサイトしたメリーさんが飯島女史を取材の場に呼びつけて、あなたなんなの? って言ったじゃないですか。

 会社の中なんだし、所属タレントなのだから、経営者が当人を呼んで話を聞くのが筋として正しい。もしも、メリーさんに何らか腹落ちしない、腑に落ちない点があるならば、その場でも中居さんも呼んで、あなたどうしたいの? どう考えているの? ってやるのが筋じゃないかなと思うんです。所属事務所のタレントなんだから。でも呼ばないんですよ。そしたら<謝りに来ませんでした>って新潮に語っている。文春の前では飯島女史を呼ぶのに、年末年始の本当に独立するかどうかの瀬戸際であるのに、謝りに来なかったというのはおかしい。本来なら、事情や真意を聞くためにも、メリーさんは中居さんら4人呼んで、ちゃんと筋を通しなさいって言うのが本来の話じゃないですかって。でも、『T』会長を通じてしか中居さんに言ってないんですよ。

中川 それはどういうことを示してるの?

山本 要は、飯島女史には本人に強く言ったけれども、SMAPの残りの4人には直接何も言ってないってことなんですよ。おかしいじゃないですか。ま、ちょっとこれ言い方悪いですけど、もう40代を過ぎたSMAPの歳で5人最前線でやるのは難しいと思ってたって説と、藤島ジェリー景子女史(メリー喜多川の娘)が、SMAPいらないって言った説があるんです。この辺は、本当に本人同士でないと良く分からないところです。

 それだったら、もうSMAPはジャニーズ事務所として稼ぎの柱にはならなくなっていくわけで、それならSMAPを干して仕事ができないようにした方がいいんじゃないかって判断されたとしても、そう不思議じゃないんですよね。この辺は、真相は外部にはわからないことですが、ただどっちに転んでも所属事務所が自分たちのタレントを潰した話になっちゃうんですよ。それで今度は、ジャニーズ事務所は家庭的な会社組織で、他の事務所と違って特殊ですって言い始めるんです。

 そもそもSMAPの謝罪会見も含めて、特殊すぎるじゃないですか。大御所に不都合なことをして、仁義切れなかった人達がさらし者になってしまう。この騒動って、そもそもはジャニーズ事務所という、1000億円くらいの規模の売り上げのある会社の世襲問題ですね。世襲問題で、世襲させる先の女の人よりも番頭の方が力があるので、本当だったらナシをつけて、暖簾分けするなり、子会社化するなり、相応にジャニーズの事業に貢献した人に言って含めて円満に問題を解消するのが本来なんですよ。

漆原 うまい落としどころを見つけましょうって話ですよね。

■世論を動かすウェブメディアの影響力

山本 お家騒動が起きた結果、パラリンピックのポストをやるような、世界的に重要なポジションにある国民的なアイドルグループを干す。もしくは公共の電波を使って、全国民に対して謝罪させる。これは本来、彼らが謝るべき問題なのか議論になってしまうし、国民的な人気のあるグループをさらし者にするっていうのは、これは許されるのかって話になってしまいます。で、当然ジャニーズ事務所の特殊性などお茶の間には必ずしも共有はされていませんから、それはさすがにやり方としてまずい。って話になって燃えていくわけです。

漆原 いわゆる芸能界全体に対してのイメージダウン。

山本 だから、ジャニーズ事務所以外の芸能界の人たちは凄く憂慮していました。芸能界のある意味で前近代的な体質をこれから改めていかなければならないところへ、ああいう謝罪会見ですから、芸能界にとってはとんだイメージダウンになるんじゃないか、と怖れるわけです。芸能界全体がそういう目で見られる可能性があるので、本来だったらジャニーズ事務所という企業の世襲問題に絡むお家騒動なんだから、ひっそりやってよって感じですよね。

 それがどういうわけか、居てもらっては都合が悪い番頭を追い出す側が新潮や文春に出て、どうしてわーわー喋ってるのかって話なんですよ。自分から目立ちにいくという。強引なやり方に批判はあったとはいえ、飯島女史もジャニーズ事務所にとっては功労者だし、SMAPにはファンもいて、公的な仕事もやっているグループなのだから、落としどころとしてきちんと考えないといけないはずです。

漆原 だから結局ね、一連のSMAPの解散うんぬん、移籍うんぬんとかに関しての報道を見てて僕が率直に思ったのは、アサ芸のヤクザ記事と同じテンションってことですよ。圧倒的な力を持つドンがいて、直下には後継者候補の組長とか、それと同じくらい影響力を持つ系列の組長がいて、さらにその下にはそれぞれ実力のある若頭衆がいて、御家騒動勃発で切った張ったをしたり、暗中飛躍したり……みたいなアウトロー記事と似たニオイがする。

山本 つまり、世界に一つだけの花よりもお花屋さんの方が大事だった。お花屋さんを経営している89歳のおばあちゃんの方が強かったって話。そういう芸能界でいいのか、と言われたら、そりゃ確かにジャニーズ事務所は特殊だ、という見解になってしまうでしょう。これはね、世間一般の常識からするならば本当に「夢も希望もない」ことで、世間でよく知られた40前後の男が、5人揃って、自分たちの行く末を自分で決められないんですよ。これが芸能界だって世間に知らしめてしまった。

漆原 あげくの果てにダークスーツをきて、ガンクビ揃えて横一列に並んで、「なんかすんませんでしたー」的な謝罪プレイですからね。

山本 あれはさすがにまずいんじゃないか、っていうのを色んなメディア、特にウェブメディアが騒ぐわけですよ。ウェブメディアっていうのは、ある意味、思った事を素直に記事化するじゃないですか。そうすると、ファンからは批判が殺到するわけです。

漆原 そうするとほら、『世界に一つだけの花』をもう一度ランクインさせようみたいな運動が巻き起こったりする。ウェブメディアの影響力はデカイ。でもね、そんなことをしても得するのは結局、槇原敬之だけなんじゃねーのかみたいな話もありつつ……。あぁいう盛り上がりを見ると、それこそジャニオタと言われてる女性ファンたちっていうのは、ものすごくナナメ上だなと思うわけです。

山本 今回、フジテレビはいきさつもあるし、完全にジャニーズ事務所の意向を聞いて、きちんと筋は通る形で会見やりましょうってことでよかったと思うんですけど、ただそれは芸能界、それも、音事協など事業者団体にも加盟していない特殊なジャニーズ事務所の文脈なのであって、一般社会からすればあれは変な会見だった。

漆原 すんごい気持ちの悪い絵面でしたよ。あれは。

山本 だからこう、何かあればまたどこかのタイミングで、違った形で滅茶苦茶なことになる可能性はあるよねっていうのが素直な意見ですかね。

中川 じゃまだ全然くすぶってる感じか。

山本 話を聞いていると、ジャニーズ事務所のライバルになるようなタレントが売り出されようとすると、ジャニーズ事務所からこういう妨害をされた、こういう嫌がらせをされた、こういうものをぶつけられた、様々でてくると思うんですよ。

漆原 ジャニーズ以外の男性アイドルの中には、ジャニーズ側が「あの男性タレントが出るなら、ウチのタレントは出さない」なんて共演NGにされているケースもあるらしいし。

山本 そのあたりの話が続々と出始めると、どこかでひっくり返るタイミングも訪れかねない。

中川 ってなると、告発するタレントなりアーティストが出始めるんじゃないですか?

山本 ありえると思いますし、仕込んでいる事務所もあるような話は聞いたことがあります。僕はジャニーズのお陰でこんなに被害を受けているというような話をするみたいですが。しかもそれらを、海外メディアのBBCだとかロイターとかが書き始めると、ヤバさに拍車がかかるよね。

vol.5に続く

(構成/デイリーニュースオンライン編集部)

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プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

プロフィール

ライター/編集者

中川淳一郎

一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社しフリーライターに。『テレビブロス』編集者、企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)など多数

プロフィール

ライター/編集者

漆原直行

1972年東京都生まれ。編集者・記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中より若手サラリーマン向け週刊誌、情報誌などでライター業に従事。ビジネス誌やパソコン誌などの編集部を経て、現在はフリーランス。書籍の構成、ビジネスコミックのシナリオなども手がける。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』『COMIX 家族でできる 7つの習慣』(シナリオ。伊原直司名義)など多数

次回告知/デイリーニュースオンラインPresents『山本一郎・中川淳一郎・漆原直行トークイベント』

【日時】3月3日(木)19時30分スタート(18時30分開場)
【場所】阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/42594

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