「保育園落ちた日本死ね」にどうしようもなく漂う”違和感”の正体

デイリーニュースオンライン

Photo by PhoTones_TAKUMA
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 いやはや、ものすごいハシャギっぷり──。どこの誰かも分からない女性が書いたブログがSNSで拡散し、待ってましたとばかりに民主党の山尾志桜里衆院議員が「知っているか?」と安倍首相に質問(注1)。その5日後には、まるで準備していたかのように、十数名が国会前で<保育園落ちたの私だ>とプラカードを掲げてマスコミの取材を受けた。

 いわゆる<保育園落ちた日本死ね!!!>騒動は、こうして瞬く間に政局化していった。

 まず断っておきたいが、少子化は国家的大問題だ。ゆえに育児環境を整えて、子供を育てることを社会全体がヘルプしていくことに、真剣に取り組まなくてはいけない。そこには何の異論もない。しかし、この<日本死ね>問題に、諸手を挙げて賛同できないモヤモヤが残るのは、なぜなのか?

 改めてブログを読んでみると、書き手の彼女は保育園の審査に落ち、仕事を辞めなくてはいけない可能性が出てきた。少子化対策を言うわりに待機児童は減らない。この現状を何とかして欲しい。……との主張は筋が通っているが、

 <私活躍出来ねーじゃねーか><何が少子化だよクソ><ふざけんな日本><児童手当20万にしろよ><子供にかかる費用全てを無償にしろよ>と、知性と品性を全く感じられない罵詈雑言(注2)が並び、あげくタイトルが<日本死ね!!!>である。

■「なんでも日本が悪い」病

 東京・杉並区の田中裕太郎区議は、自身のブログで怒りを表明した。

「『日本死ね』などと書き込む不心得者や、そんな便所の落書きをおだてる愚かなマスコミ、便所の落書きにいちいち振り回される愚かな政治家があとをたちません。事情はどうあれ、『死ね』というほど日本が嫌なら、日本に住まなければ良いのです」

 田中区議ほどではなくとも、主張の内容以前にヒドイ言葉使いに強い不快感を感じた向きは多かった。確かにインパクトゆえに拡散した側面はあるものの、賛同より多くの反発を食らっては元も子もない。

 子供たちのために良い環境を残してあげたい思いは、誰しも同じ。ならば、日本が死んでは困るはず。子育て期間のヘルプも大事だが、彼らが大人になった時に経済が崩壊していたり、他国の侵略にさらされている状況で幸福になれるのだろうか。すべての課題についてバランスを取って調整していくのが政治であり、<日本(が)死>なないようにする作業だ。

 本来、堂々と主張していい議論が、公共性を失って矮小化。自分のみのメリット追及と不貞腐れとしか聞こえない点が、このブログに漂う違和感だ。その醜さは、「私も認可保育園落ちた〜」とすり寄ってきて、政治利用を図る共産党の吉良佳子参院議員の姿にダブる。年収数千万円もあるのだから、落ちるに決まっているだろうに……。

 これからも子育てに取り組む、この女性ブロガーに次の格言を送りたい。

「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」(ナポレオン)

(1) 首相に質問…「匿名なので、(略)確かめようもない」(安倍首相)
(2) 罵詈雑言…偏差値の低そうなもの言い。

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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