都知事選に出馬表明した山口敏夫元労相とは何か?|プチ鹿島コラム

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山口敏夫ツイッターより
山口敏夫ツイッターより

 石田純一の名前まで出てきた都知事選ですが、私は1人の小さいおじさんの出馬表明にも注目しました。

『山口敏夫元労相がジャージー姿で都知事選出馬表明「肉を切らせて骨を断つ覚悟」』(スポーツ報知・7月5日)

「ああ、懐かしい」と思った人と「え、誰?」と思った人で半々だろうか。

《山口氏は1967年に衆議院議員に初当選し、10期務めた。1995年に東京協和、安全の旧2信用組合(ともに解散)の乱脈融資事件(二信組事件)で背任、詐欺などの罪に問われ、2006年に懲役3年6月の実刑が確定した。今年、政治団体「国民主権の会」を設立した。》(同)

 この人がなぜ今また都知事選? キーワードは「森喜朗」である。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長。山口氏は昨年秋に「一刻も早く森喜朗を引責辞任させよ」という文書を作成し、週刊誌で一瞬だけ話題になった。文書のあて先は「安倍総理、舛添都知事、衆参国会議員各位、東京都議会議員各位、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会関係者各位」。

 そのあと、私が年末のスポーツ紙で「今年の時事ネタをふりかえる」的なインタビューで森喜朗をネタにしたら、山口敏夫氏から私あてにもその文書が届いたのである。どうやら新聞・雑誌をすべてチェックして森喜朗について語った人に送っているらしい。さっそく読んでみるといろいろ項目が。

【安倍晋三総理、舛添要一都知事は、『オリンピックの原則』順守ゼロの日本一アンフェアな人物「Mr.エンブレム・森喜朗」会長を、即刻辞任させよ!】

【「大勲位菊花章頸飾」吉田茂・佐藤栄作・中曽根康弘元首相と同待遇の勲章授与まで"居座る"森喜朗君は身の程知らず!】

 山口氏はどんどんヒートアップしていく。

【何もやらない、何もしない、責任はとらない"老害"「Mr.エンブレム・森喜朗」】

 どこかのウイスキーのCMコピー風な罵倒。

【森喜朗君に対する週刊雑誌等による批判記事を国会図書館に出向いてコピーしても、段ボール箱の山が出来ます。ネットの2chなどでの悪口雑言の書き込みは、ベスト3の常連となっています。】

【森喜朗君のOne Fore All 、All Fore Oneは、「皆」は『森』の為に『森』は『森』のために】

 ここで書けないような罵倒もあった。私はこの文書を読んで「五輪と森喜朗批判は大切だけど、私怨もあるのでは?」とも思い、実際に会って話を聞いてみた。

 私が「森喜朗は●●だとか言いだしたら国民運動にはならないですよ。山口さんと森さんの間になんか、個人的なしがらみがあったんじゃないかと思われてしまう。こういう書き方をするとマスコミは乗ってこれないと思うんですよ」と言うと、「確かにあなたの言うとおり。でもやっぱり俺が一番言いたいとこは、あいつやっぱり頭おかしいなと」。山口氏はゆずらない。ただ、森喜朗がいるかぎり五輪が危ないという大義は熱かった。納得できた。

 すると、今回の都知事選出馬。ああ、なるほどと思ったのである。いま「アンチ森喜朗」を掲げたら、ある程度はウケるだろう。あとはどう自分の思いをどう人びとの共感にうまく変換するか、という作業だと思う。

 山口敏夫氏が政見放送や演説で「森嫌い」の感情を抑制できるか、それともはみ出しちゃうか、ひとつの見どころだと思います。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)など多数。

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