吉田豪インタビュー企画:渡辺淳之介「BiSはスクールカーストの最下層系で一般ピープルの星」(1) (4/4ページ)
■追い込まれたときに生きている実感を覚える
──BiSはトップクラスのアイドルのポテンシャルじゃないからこそ、渡辺さんはひたすらメンバーを追い込んで、感情を引き出すようなことをさせてきたと思うんですよ。
渡辺 そうですね。だから成功したんだと思うんです。何も知らない事務所から横浜アリーナまでなんとか行ったっていう、かなりのウルトラCを。
──ホント、アイドルの歴史に残るレベルのことをやってるんですよ。ただ、その過程で精神崩壊しちゃう人が何人か出るぐらいにメンバーを追い込んだから、素直に評価しにくいってだけで。
渡辺 精神崩壊しましたね、ホントに。プー・ルイも病気になっちゃったし。
──まあ、メンバーが病みまくるアイドル運営にはあこがれないですよね。
渡辺 あこがれない! 俺がわざわざ引っかき回して精神崩壊させてるところとか、誰も聞きたくないってのはたしかにあるな、みたいな。
──よくBiSはエモーショナルだって言われてたじゃないですか。それは強制的にエモーショナルな状態にしているからだとはずっと思ってて。
渡辺 ふつうの人間だったら……俺もふつうだと思いたいんですけど、ふつうの人間だったらそこの状況に追い込むこと自体にものすごいストレスを感じるんだと思うんですけど、僕はそこに生きてる実感があるんですよね。「うわ、かわいそう……」みたいな。
──自分でやっておいて(笑)。
渡辺 電話でキレられてめっちゃ怒ってるのとか聞きながら、これをどう切り抜けるかが生きてる実感を手にするチャンスだなとか思って。
──それはメンバーに怒られてるときの話ですか?
渡辺 メンバーも、ほかの大人も含め。人生なんてゲームみたいなもんなんで、ダメになったらダメになったでリセットも利くだろうし。
──そういうスリリングな状況のほうが生きてる実感は湧きますよね。
渡辺 そうなんですよねー。世渡りがうまい人たちってすごいいっぱいいて、いまはいろいろ大人が僕の周りにも増えてきちゃったんで、大人の顔を立てなきゃいけない部分とかいろいろあるんですけど、意外と意見が通りやすくてラッキーだなって思ってますけどね。「とりあえず渡辺が言ってるからそのままにしとこう」みたいな。
──BiSで実績を作っちゃいましたからね。
渡辺 そこは結構ラッキーなんですけど、難しい問題が少なくなってきちゃったなっていう気はしてますね。
──生きてる実感を得づらくなってる。
渡辺 そうです。最近ホントになくて。逆に言うと、僕がこれまで無視してきた大人の関係をちゃんとするとか、そっちのほうに最近はシフトしてますね。
プロフィール
音楽プロデューサー
渡辺淳之介
渡辺淳之介(わたなべじゅんのすけ):1984年、東京都出身。高校を中退した後に大検を取得して早稲田大学に入学。大学卒業後、音楽業界へ。数々の過激な活動で知られるアイドルグループBiSを手がけて大きな話題を獲得する。BiS解散後は、自身の会社である株式会社WACKを設立。アイドルグループBiSHやGANG PARADEなどをプロデュースしている。今年の4月にはその半生を追った書籍『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(宗像明将・著 河出書房新社)が刊行された。また、このインタビュー後の7月8日に新メンバーを募集し元リーダーのプールイと共にBiSを再始動させることを発表してファンを驚かせた。
プロフィール
プロインタビュアー
吉田豪
吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(?)新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。