吉田豪インタビュー企画:渡辺淳之介「BiSでは高熱が出ようが何しようが絶対に休ませなかった」(2) (2/3ページ)

デイリーニュースオンライン

■最初の会社の給料は8万円だった

──そこから逃げずに。

渡辺 逃げずに。その感覚がないのが成功しない原因なんんじゃないかなって思うんですよ。たとえばお給料がないとか交通費がないとか、いろいろ不満もあると思うんですけど、そこは最初に説明してるはずで、覚書にも全部書いてあるから何も文句言えないはずなんですけど、そこはだんだんすり替えてくるじゃないですか。ブラック企業もたぶん最初に説明してるはずなんですよね、「残業代は出ないよ」とか。でも、それが「ほかの会社は残業代がしっかり出てるのにウチは出ない……」とか、だんだん悪いとこしか見えなくなってきちゃう。それがホントに残念で。僕がつばさレコーズに入ったとき、給料が8万円だったんですよ。当然ありえないんですけど。

──それ社会のルールとして普通は「なし」ですよね。

渡辺 そうなんですよ。でも、僕が単純に思ったのは、俺がどうしても必要になったら、この8万円は8万円じゃなくなるだろうなっていうことなんですよね。いいとこばっかり見ればいいのになって僕は思うんですよ。

──悪いところばかり見るんじゃなくて。

渡辺 それでいうと引っかき回して人間関係をダメにするタイプなんですけど、ものすごいポジティブで。お金がないならないなりの生活をすればよくて、キリスト教の「暗いと不平を言うよりも進んで明かりをつけましょう」って言葉が最近はよくわかるようになって。不平を言ってもマイナスの人しか集まってこないんですよね。僕はいいことしか言わないんですよ。マイナスなことってTwitterでもあんまりつぶやかなくて。マイナスのこと言ってると、マイナスの人たちって負のオーラで集まってきて、どんどん自分たちで足を引っ張り合っちゃうから、前向きになってるヤツ以外はあんまり近づかないようにしてて。僕も悪口はめっちゃ言うんですけど、前向きに言いますね。

──前向きな悪口……?

渡辺 だから寺嶋由芙も大嫌いだし、しゃべりたくもないんですけど、頑張ってほしいなとは思うし。

──前向きだ(笑)。

渡辺 だから言ったとおりのことをしてほしくて。ちゃんとダンスレッスンとボイトレやって、早く武道館行ってほしいなって僕は思ってるんですけど。

──それ、エールじゃなくて嫌味ですよ(笑)。あの頃、ボクは由芙さんに「話し合いましょう!」って言うだけじゃなくて、その直後にBiSのラジオ『ビッスン?』(ラジオ日本)に呼ばれたから、プー・ルイさんにも「国技館ワンマンの前に話し合いましょう!」「とにかくいまはメンバーの話し合い!」ってずっと言い続けてたんですよね。

渡辺 ハハハハハ! でも、あのときはもう話せない状況になっちゃってたっていうのと、粗探ししかできなくなっちゃったっていうのがあったんだろうなと思っていて。

──……そういう状況にしたのは渡辺さんでもあるわけですよね。

渡辺 99パーセント僕ですね。

■軽はずみな言動で相手を切れさせてしまう

──つばさレコードの前にはデートピアに所属してた話も本に出てきましたよね。

渡辺 そうですね。でも、僕も1年いたかいないかぐらいなんですよ。

──ボクが「新宿タワレコの近くのカフェで会いたい」って言われてデートピアの人と打ち合わせしたときに、いきなり「吉田さん、このへんのいい風俗知らないですか? せっかくだから帰りに風俗でも寄ろうと思ってるんですけど」って聞かれて、すごい会社だと思って。

渡辺 ハハハハハハハハハ! デートピアって名前自体が風俗みたいですからね(笑)。

──デート商法のデストピアみたいな(笑)。わかりやすく説明すると、Perfumeが流行ったらAira MitsukiとかSaori@destinyみたいに、それに便乗したアイドルを次々作るような会社で。

渡辺 そうですね。デートピアの輝門社長っていうのがビーイング出身なんですけど、単純にビーイングイズムというか、宇多田ヒカルがきたら倉木麻衣みたいな感じの方だったんで、めっちゃ勉強になりましたね。デートピアっていう完全に新興の会社がどうやって目立っていくかみたいなところでいうと。

──渡辺さんがデートピアで学んだのって、パクリでもおもしろければいいみたいな発想なのかなと思ったんですよ。

渡辺 そうですね。パクッていいんだなって思いました(あっさりと)。

──やっぱり!

渡辺 二番煎じ上等みたいな。色々もちろん叩かれたりもしてましたけど、かなり勉強させてもらって、BiSでも活かしました。僕は絶対批判しないんで。

──悪いのは会社じゃなくて自分にしたい。

渡辺 はい、僕がいけなかった(笑)。悪口を言うと、その悪口が広がるじゃないですか。俺、逆にパブリックイメージはめっちゃ悪いんですけど、じつはいい人って言われたいタイプで。ただ、頑張っていろんな会話とかから分析しようとはするんですけど。何にせよ表情が読めないです。あと、軽はずみな言動がだいたいキレさせますね。

──それはウケると思ってやっちゃってるわけでもなく、ナチュラルに出るんですか?

渡辺 ナチュラルです。それはどうしようもないんで、会社に入ってからは「おまえは空気を読めないし、直せる問題じゃないから、とりあえずいい人だっていう演技をしろ」ってデートピアで教えてもらいました。それだったらできるかもと思ってやってるのが、いまの自分だったりするんで。感情表現はすごい苦手なんですけど、ナチュラルに出ちゃうから、「ヤバい、いま素に戻ってた!」みたいなときが、だいたいキレさせるポイントです。

──そういう渡辺さんの謎が解けたっていう意味では、いい本だったんですよ。BiSがなんでああなったのか、すべて謎が解ける。感情を読めない人だったら罪悪感も持たずにメンバーをあそこまで追い込むこともできるよなって。

渡辺 そうなんですよ。結構おもしろいなと思ったのが、過呼吸で倒れたりするじゃないですか、何がつらいんだろうなと思って(あっさりと)。

──ダハハハハ! つらいに決まってますよ!

渡辺 ハハハハハ! 僕、過呼吸になったことないし、高熱でつらかったりしても、そんなにつらいと思ったことがないんで、何をこいつはこんなにつらそうなアピールをするんだろうな、みたいな。

──メンバーが過呼吸でブッ倒れてるのを見ても、「もうちょっと頑張ればいいのに」ぐらいの感じでいたら、そりゃあモメますよね。

渡辺 そう、まだできるでしょって。

──ひどいなー(笑)。致命的なぐらいアイドル運営に向いてないですよ!

渡辺 でも、あきらめさせるのも結構大事なので。たとえば優しい運営の人たちは空気を読んじゃうから、明らかに向いてない女の子でもアイドルを続けられてたりしますけど、そんなの辞めさせりゃいいんですよ(あっさりと)。

──うわー(笑)。

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