政府の労働政策の切り札”プレミアムフライデー”の謎|やまもといちろうコラム (1/2ページ)

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 山本一郎(やまもといちろう)です。好きな時間で好きな仕事をやる生活を20年以上やった結果、43歳のいまでも忙しいと週95時間働いていたりします。いい歳して、いったい私は何をしているのでしょう。

 そんな私の眉毛が激しく動くようなニュースがやってまいりました。

月末の金曜は午後3時退社 個人消費喚起へ「プレミアムフライデー」構想

 あの……。何でみんな制度的に一斉に休まなければならないのでしょう。別にそれがダメだ、というわけではないのですが、ほかにやるべきことがあると思うんですよ。それこそブラック企業、ブラックバイト対策のような、基本的な労働法さえも守らないような事業者に対して、強い制裁が施せるだけで、この政策が求めるような個人消費喚起に繋がるような座組は簡単に用意できるのではないか? と思うわけです。 

 逆に言えば、そういう超過労働を強いるような企業姿勢を温存したい別の何かがあるのではないかとか、長時間働く国家公務員は自分たちとしては働くのが当たり前だ、という何か別の常識で動いている部分があるのだとすれば、それはむしろ霞が関で働いている人たちがもっときちんと休めるような座組を考えてみるほうがいいんじゃないかとさえ思います。たぶん、日本で一番超真面目に働いている人たちでできている組織が日本の中央官庁です。もしもこの「プレミアムフライデー」ができたとして、本当に霞が関から蛍光灯は消えるのでしょうか。 

 さらに、長期の学生インターンに給料がきちんと払われていない問題や、大学卒業予定者への一括採用の問題など、労働と法律についてはかねてから様々な問題が指摘されています。本来であれば働く人たちを守るための仕組みである労働組合の組織率が下がり、上場企業でICT系を中心に奴隷的な労働時間を強いる文化が横行しているにもかかわらず、労働組合を蘇生しようとすると解雇勧告がなされるような、80年代ぐらいに横行した問題が垣間見えるわけです。

 恐らく必要なことは「日本人はもっと休め」ではなく「効率的に、的確に働け」とか「やばい仕事はきちんと断れ」などという、仕事や価値に対する合理性や、空気読まずの心ではないかと強く感じます。月一回、正規雇用の人が金曜早帰りしたところで、日本の経済全体が盛り上がるような消費喚起なんかするはずないじゃないですか。それでもそういう政策を案として掲げなければならないほど、誰かが「それは問題だ」というような尖った、でも合理的な政策が提言できないということでもあるのでしょう。普通、なにか会議があって「大臣。300兆の個人消費を360兆にするために、金曜早上がりする方針を打ち立てましょう」とか言われたら、その大臣が「馬鹿なのかな?」ときちんと反応できるぐらいのリテラシーが欲しいと思うんですよ。

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