高畑淳子、成人した息子の犯罪でメディアから”袋叩き”の是非|やまもといちろうコラム

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Photo by panDx1
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 山本一郎(やまもといちろう)です。選挙も終わったはずなのに、残務と本業のしわ寄せがやってきて、ここのところ異様に忙しくて困っています。まあ、人から頼まれているうちが華なのでしょうが。 

 ところで、例の高畑淳子(61)の長男で芸能人の高畑裕太容疑者(22)が強姦致傷で逮捕となり、最近売り出し中であったにも関わらず仕事を全部下ろされて多額の損害賠償に見舞われているばかりか、母親である高畑淳子も「なんでそんな子供を育てた」的な、心無い批判に晒されているので興味を持ったわけです。

 一般論でいうならば、成人した息子の犯罪を親が咎を負うのはおかしい話ですし、本来はそこまでメディアで晒し者にしなくてもいいじゃないか、というカウンターが発生するのも事実であります。実際、ウェブメディアでは高畑淳子に対する同情論も出ていますし、また高畑裕太が発達障害だったとか、性癖に問題があったんじゃないか、などといった話とともに、ほかの女優に対する執拗なアプローチを掘り起こしてきて、本人にぶつける的な質問も母親に対して多数飛び交うことに対して批判する声もネット上では多く聞かれます。 

 ところが、実際にはこの高畑淳子の記者会見や、本人に対する心無い質問に対して、サイレントマジョリティはおおいに留飲を下げているようで、普段であればオリンピックが終わったところで話題枯れするところが、かえって高畑家の異常な性犯罪のお陰で一気に話題が集中しているあたりにわびさびを感じます。

 平たく言えば、成人した息子の犯した犯罪で母親が記者会見で不躾な質問に晒され可哀想とするネットでの発言は綺麗事にすぎず、実際の世の話題でいうならば一連の高畑家の不始末に多大な関心が圧倒的に寄せられているということになります。みんな、そっちに興味があるんすよね、きっと。 

 で、そういう変な質問に批判が毎回集まる割に、変な質問が問題の起きるたびに繰り返される理由は、叩きやすさと分かりやすさ、そして面白さといった嫉妬半分で興味本位な図式があります。いくらメディアを見て不快感に思う人が一定割合いたとしても、大多数がそういう下世話な家庭環境や犯罪に対する興味があるからこそ、ニュースになるし繰り返し報じられるし、次から次へと不躾な質問は続き、マイクが被害者や家族に押し付けられ続けるんですよ。

■一時間以上の記者会見の真意

『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)の中山正敏さん(49)や、『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ系)大村正樹さん(49)が母親に性犯罪を犯したとされる息子の性癖について質問するのも、そういう質問が求められているのだろうと判断したのであって、ネットで「その質問は行き過ぎだ」と批判されたとしても同じ立場で質問する側として、ギャラ貰ってその場にいれば、母親の記者会見だしレイプ事犯だと言われているのであれば「あなたの子育てどうなってるんですか」とか「母親から見て倅の性欲知ってたんですか」などとは一応は訊くでしょう。

 それが、恐らくはみんな一番知りたいことなんだもの。

 それでも高畑淳子が我慢して一時間近く答え続けた理由は、間違いなく芸能人だからでしょうし、他人に迷惑をかけているからです。これから、母子で仕事は降ろされ、多額の損害賠償請求を受けるわけですから、記者会見で回答しないで逃げ回るなんてことをしたら、仕事から干されるだけでなく賠償だって恐らくは払えません。そっとテレビから消えるにしても、屈辱的な質問に晒されて泣きながら答えるぐらいのことをしなければ、やはり「逃げた」と判断されてしまうことでしょう。 

 その点では、先日の旦那の覚せい剤事案で大変なことになった高島礼子(52)や、かつては息子の不始末で同じく大変なことになった三田佳子(74)、あるいはみのもんた(72)といった、いろんな著名人を振り返ると、酷い質問にもやっぱりちゃんと対応しておかないと、キャリアそのものが沈没してしまうのは言うまでもないことです。

 その点では、むしろこの手の界隈での品のない質問そのものが当事者に対する禊であり、そこまで晒されているんだから許してやれやという構造の一部であることに気付きます。緩い質問だけされて、ああそうですか分かりましたでメディアに引き下がられると、かえってベッキー(32)のようにいつまでもネタを引っ張られて満足に復帰できなくなってしまうのでしょう。

 かえってあれだけの酷い質問を耐えたのだから、もし何かあったらまた仕事しようかって同情を引くためのツールとして、ぶち込まれている部分が大きいのだろうなあと思うわけであります。 

 翻って、乱暴されたとされる女性の側の感情になると、当然犯罪を犯した当人に対する憤りもさることながら、いずれにせよ「家庭はいったいどうなってるんだ」と言うことぐらいはするでしょう、法廷で。そういうものを、社会的制裁の在り方の一つとして、芸能人に対し酷い質問のひとつもして血祭りにあげたことにし禊とするのは、個人的にはアリなのかなあと思います。

■「あいつらとは違う」とのネタ消費

 つまりは「ネットで同情論、行き過ぎた質問に批判!」みたいなリアクションそのものも、この問題にとっては予期された反応の一部分にすぎず、いいように利用されているだけだろうなあと感じます。それも、大多数の興味本位の日本人に比べれば「芸能人母子に対する質問として行き過ぎだ」という批判も単なるノイジー・マイノリティであり、ウェブメディアのページビュー稼ぎの一環なのであって、結局テレビ局など大手メディアの取材のやり口に批判を並べて「あいつらとは違う」と言いたいだけのネタ消費に過ぎないのでしょう。

 じゃあ年初に起きた(私の大好きな)キングオブコメディ高橋健一(45)の犯罪において、高橋家に対してお前ら少しでも好意的な話をしたのかとか、覚せい剤で捕まった清原和博(49)の家庭を踏みにじったことでちゃんと批判したのかってことです。あんまり公平性なんて考えてはいないんでしょう。ましてや、母子で芸能人ですからね。 

 叩きやすいところを叩くテレビ局を、叩きやすい先としてネットで批判と言い募って稼いだPVはおいしいんですかねえ…。こういう場は、盛大に祭ってあげて、ちゃんと叩いてあげることで、介錯してやるのが筋だと思いますが。 

 本当に実力があれば、帰ってくる世界だもの。母親として激しく叩かれ晒し者にされた高畑淳子もさることながら、乱暴を本当にしてしまったのであればしっかりと反省して、高畑裕太には復活してほしいと心から願っています。誰にでも、黒歴史はあるさ。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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