東京大学「女子学生優遇」家賃補助月額3万円の是非|やまもといちろうコラム (1/2ページ)

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 山本一郎(やまもといちろう)です。地味に東京大学の政策ビジョン研究センターというところで客員研究員をしています。

 私などは、男女差に関係なく能力に応じて学力の高い人が最高学府にいるというのも理屈だと思いますし、男女の入学水準に差があることを問題だとするならば、女性の入学志望者に対して積極的に格差解消したいというのであればそれはそれで構わないという、「比較的どうでもいい派」に属するのですが、東京大学がかなり具体的な施策に踏み込んでいたので興味を持ったわけです。

東大、女子学生に月3万円の家賃補助 来春に初めて導入

 ある種のアファーマティブアクション、つまりは格差解消のための積極介入路線でありまして、思い切ったなと感じる一方、女子学生が東京大学を志さない理由は住宅補助のような経済的理由だけじゃないならば「まずは着手してみる」アピール効果以上にはなかなかならないのだろうな、とぼんやり思う次第です。

 それでも、改革に着手して予算が付いたという時点で凄いことではあるのですが。

 その点では、大学改革の議論を含め、大学とはどうあるべきか、今後、ポスト少子化で大学自体が変わらなければならない状況で何に優先順位を置くべきかという話は、もっと議論されるべきであろうと思います。年ごろの子供をお持ちの家庭なら、気にしているであろう大学入試改革もその一環ですし、AO入試や推薦、あるいは医学部に見られる地域枠など制度上の問題と、学生の向学心や就職率、理系人材の拡充と教員の質みたいなものも横断的に相互連関していて、何をKPIにし、どういう優先順位で物事を進めていくべきなのか、悩ましいものは多々あるわけであります。

 例えば、いま厚生労働省や文部科学省では「医学部定員をどうするか」というネタで、おおいに議論が起きております。単純な話、将来の医師不足、もしくは医師あまりに対して、需要予測をしっかりと行い、将来の医療需要に見合った医師の定員を考えなければなりません。

 すでに日本の過疎地では医師あまり、病床数の余剰が問題になり、公立病院の経営が立ち行かない現状がある一方、そういう過疎地に好き好んで従事する医師が絶対的に不足しているので、医療にかかりたくてもかかれない人々がたくさんいるぞという問題が長らく未解消のままにあります。

 逆に、美容整形外科を中心として「稼げる医療」や特定の診療科のような「比較的楽な医療」に医師が集中する医師偏在の結果、残りの医療従事者が勤務医制度の中でブラック企業化してしまうという課題もまた発生します。問題は制度であり、医師もまた人の子なので楽で稼げるところに行きたい希望がある以上、何らか定員や仕組みで縛らなければならないという状況があって、市場原理に任せておくととんでもないことになるんじゃないのという話になるわけであります。

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