「NAVERまとめ」問題が照らす”乗っかる系ビジネス”の悩み|やまもといちろうコラム (3/3ページ)

デイリーニュースオンライン

■業界全体に根付く問題の根幹

結論からいうと、LINEの上場審査に関する経営者ヒヤリングでのNAVERまとめ事業に関する説明にすべてが凝縮されているように思います。掻い摘んで言えば、NAVERまとめはNAVER創業メンバーの一部が自信をもって投入したサービスで、収益の柱というよりは、事業に対するこだわりの問題なんだそうです。個人的には、DeNAみたいに「ソーシャルゲームの次の収益事業がうまくみつからず、焦っていた」という話のほうがまだ…、という気もしますが、NAVERまとめ事業がLINEの外すことのできないコア事業だとするならば、むしろちゃんと適法になるようなシステムを“発明”して、権利者も利用者も喜ぶようなサービスに作り替えたほうが喜ばれると思います。

 DeNAもまだまだ火種を抱えているようですし、焦るDeNA経営陣に危険物を買わせたキャピタリストや剽窃メディア関係の人たちはシンガポールで別のメディアが伸びるチャンスだと関係者にハッパをかけているとも聞きます。まあどうせ大きくなってきたら誰かが叩き潰すような情報を出してくるのかもしれませんが、これらの「法にさえ触れないで短期的に儲けられれば良い」と考えている向きというのは、いまのベンチャー界隈の「法律をギリギリで攻めるのを良し」とする間違ったベンチャー精神に依拠している部分が強いのだろうと思います。

 それなりの報酬で優秀な技術者やデザイナーを集めてきておいて、やっていることがGoogleなど検索エンジンの仕組みをハックするという、競合するべき相手の手のひらに乗っかりに行くだけのスケールの小さなサービスしか生み出せていないあたりに懸念があるのではないでしょうか。その割に、ベンチャー系のローンチパッドでは世界を獲るぞ的な怪気炎や日本経済の未来についてでかい口を叩くのが相場になっているわけで、それでいてやっている商売がネットに流通している記事を集めてきて、面白おかしく編集して広告貼って収益を上げているだけでは、世の中良くなるために働いているわけではないのだろうと思うわけです。

 全員が全員、スティーブ・ジョブズさんを狙える人間だというわけではないのは事実です。ただ、さっと儲けて、利益が足りない上場企業に売りつけて儲けるというサイクルがもたらす影響は、市場主義的とはいえなんとも残念なことです。

 人工知能にせよサイバネティック社会にせよIoTにせよ、折角の技術が出回っているのに手元で扱えるビジネスが結局はまとめサイト程度のネタで喜んでいるようじゃダメじゃないの、結局直接モノを売ることもできず広告で稼ぐしか方法ないんじゃないの、と思うんですが、どうでしょうか。

 年末押し迫ったところで問題を投げっぱなしジャーマンにするのも恐縮なのですが、来年も皆さまの良い年となりますように。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研

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