絵本の無料公開で猛非難?”炎上芸”キングコング西野のしたたかさ

デイリーニュースオンライン

「えんとつ町のプペル」より
「えんとつ町のプペル」より

 善行は、人に感謝されることが多い。特に、モノを無償で提供するという行為には多くの称賛が集まるのが普通だ。しかし、こうした行為も状況によっては人々の批判にさらされることもある。それを象徴するような騒動が、お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣(36)の身に起こった。

■絵本の無料公開で大炎上

 今月の19日に、西野は、自身が手掛けた絵本である『えんとつ町のプペル』を無料公開するとブログで発表し、ネット上にて公開した。この本は、西野が3か月前に発表し、23万部を売り上げる大ヒットとなったもので、製作費をクラウドファンディングで募り、絵コンテや制作の指揮を西野が行い、イラストレーターやクリエイターなど、33名が参加して作ったとされる。

『お金の奴隷解放宣言』とタイトルが付けられたこの日のブログへの投稿によると、ヒットを飛ばす中で、小学生から「2000円は高い。自分で買えない」という意見が届いたことが無料公開のきっかけになったという。

 文中では、“「お金が無い人には見せませーん」ってナンダ? 糞ダセー。……いや、モノによっては、そういうモノがあってもいいのかもしれません(←ここ大事!ニュースになると切り取られる部分ね)。しかし、はたして全てのモノが『お金』を介さないといけないのでしょうか?”“僕の財産は、『えんとつ町のプペル』という《作品》だと思うのですが、個人の財産を個人が独り占めするのではなく、分配し、皆の財産にしようと思いました。皆が豊かになった方が、巡り巡って自分も豊かになるだろう、と。『ギブ&テイク』ではなく『ギブ&ギブ』。自分のことだけを考えても、その方が良いだろうと結論しました。お金の奴隷解放宣言です。”(原文ママ)と無料開放に至った心境が綴られている。

 そんな西野のとった行動に対して、世間では「凄い決断だ」「素晴らしいこと」「ちょっと好きになった」「自分で権利持ってる作品なら好きにしていいや」という肯定的な意見も多いが、それ以上に「正当な報酬をもらうのも金の奴隷なのか」「買ってくれた人に失礼」「他のクリエイターへのダンピング材料になる」「無責任」などという批判が相次ぎ、さらに、その無料公開されたサイトが貼られた広告によって収入を得るアフィリエイトサイトであったことから、「結局金の出所が変わっただけ」「渾身のギャグなのか」という声も上がり、まさに炎上状態となっている。

 自らが制作し、権利を持っているであろう作品を無料で公開するという一般的には善行とされることを行った西野が何故ここまで叩かれるのか。

「ブログの文面を見ても、ニュースになると切り取られると言っているあたり、あえて反感を覚えるような言葉を使ってるんじゃないでしょうか。お金の奴隷なんていうのはその典型でしょう。元々、『太宰治が大嫌い』という発言や、放送作家の鈴木おさむが描いた芸人交換日記への批判をするなど、度々炎上を続けており、巷では炎上芸人なんて呼ばれている方ですからね。今回の件も話題にするためにあえてこういった言葉のチョイスをしたように感じてしまいますね。近頃は西野さんのこうした炎上芸みたいなものをスルーしようという動きも出てきているみたいですが、それでもスルーされないのは経験と技術なのでしょう」(週刊誌デスク)

 以前から数多くの炎上を繰り返してきた西野。さらに一見称賛されてしかるべきこの行動でも炎上を招くあたり本領発揮といえよう。

 こうした炎上で自分の知名度が上がれば芸人・西野にとってはプラス面も多いだろう。だが、今回の無料公開がクリエイター・西野にとっては大きなダメージになり兼ねない、と危惧する声も上がっている。グラフィック作家の男性は語る。

「2013年ごろ、やなせたかしさんが地方自治体など多くの団体に依頼され、かなりの数のご当地キャラクターを無料で描いたことが話題になったことがありましたが、この時にもやなせさんのような巨匠がタダで描いてしまったことで、業界内には報酬を受け取りにくい空気ができてしまった。今回、西野さんもそういうことに配慮して他のクリエイターに無償で仕事をするよう迫るな、といった内容を合わせて書いてはいるが、西野さんとイラストやグラフィックを本業としているクリエイターでは受け取るギャラの意味も立場もまったく違う。腰掛けの西野さんだけが”ええカッコ”して業界を荒らすな、という声が周りには多い」

 自分が権利を持っている2000円の本が買えない層に対し、ウェブ上で無料で見られるようにする。その行為自体は称賛されてしかるべきもの。とはいえ、今回の騒動に関しては、西野の知名度を上げたいという意図が透けて見えてしまったこと。そして、その行為によって他人が不利益を受ける、ということが二重の炎上要素があったことになる。

 こういった声を受けてか、当該の発表が行われた19日の午後、西野は無料化を機に、『えんとつ町のプペル』のAmazonでの売り上げが増加したという報告を行ったが、炎上には追加情報を重ねてさらなる関心を呼び込んだ。この西野の一連の行動は出版業界に一石を投じるものとなるのか、あるいは巷で揶揄されているような炎上芸に終わってしまうのか。その成り行きに注視する関係者は多い。

文・佐々木浩司(ささき・こうじ)
※1980年群馬県生まれ。スポーツ誌の契約記者を経てフリーに。現在は主に、週刊誌やビジネス誌で活動中。得意分野は芸能、プロ野球、サッカーなど。主な著書に『洗脳のすべて』(宝島社)など。
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