西部警察を巡る「石原裕次郎・渡哲也」の激情バトル(3)夢半ばにして消えた「太陽」 (1/2ページ)
急場をしのいだ「西部警察」は依然、コンスタントに20%台の視聴率をキープしている。テレビ朝日から「PARTII」を打診されたコマサに天啓が閃く。
裕次郎に無理はさせられない。ならば地方都市を舞台に大門軍団が活躍するという“ご当地めぐり”のアクションテレビ映画だ。
コマサが石原プロで幹部たちにまくしたてる。
「スーパーマシンをガンガン走らせ、大門軍団が所轄を飛び出して日本全国を縦断する。どうだ、ワクワクするだろう。それだけじゃない。地元企業とタイアップして広告費を取る。これを全国展開するんだ」
こうして「日本全国縦断ロケーション」がスタートする。派手なカーアクションや遊覧船爆破炎上など常に話題を集め、高視聴率を叩き出した。
石原プロは急成長を遂げる。コマサの強引とも思えるビジネス手法は「銭ゲバ」と揶揄されたが、
「銭ゲバで結構だ」
と意に介さなかった。
「企業が赤字を出すのは犯罪である」というのがコマサの信念であり、これは倒産危機の辛酸を舐めた男の本音でもあったのだろう。
だが、渡は少し違った。コマサの言うことはわかる。だが「なぜ稼ぐのか」「稼いでどうするのか」「そもそも石原プロは何のために存在しているのか」という思いが、常に頭の片隅にあった。
答えはハッキリしている。裕次郎が繰り返し言うように「石原プロとして映画を撮る」──すべてはこの一点に集約される。ならば、なぜコマサは映画制作のことを口にしないのか。資金なら、すでに潤沢にあるではないか。
「コマサ、どうして映画の話をしないんだ」
裕次郎の前で、渡が詰問した。
コマサが応じる。
「必ず撮る。そのためにはしっかり稼いで、何があろうとビクともしない会社にするのが先決じゃないのか?」
「カネはあるじゃないか」
「もっといる」
「いくらだ。だから、いくら稼げばいいんだ!」
「もういい、二人とも」
裕次郎が中に入った。
後にコマサは「映画を撮らないんじゃない、撮るのが怖かった」と心情を吐露する。