吉田豪インタビュー企画:北条かや「うまく生きていたら、こんなことにはなっていません」(1) (2/3ページ)

デイリーニュースオンライン

■幼少期は無様なエピソードがたくさん

──そうやってやり取りしてて思ったのが、えらいオープンな人だなっていうことと、意外とたまに口が悪くなるってことだったんですよ。テレビのイメージとは違う人だなって。

北条 テレビはやっぱり広告主さんにご迷惑かけられないっていうのがあるから、「クソムカついて」とか言えないじゃないですか。

──そういうことを言わないのって、ふつうはみんな広告主のこと考えたからじゃないはずなんですよ。

北条 え! なんで言わないんですか?

──ただ単に、場によって言葉遣いを選んでるだけだと思います。

北条 なるほど。ホントに口は悪いです、出自がああいう感じなので。

──本の前半は、その口の悪さが出ていて爆笑したんですよ。

北条 ……前半そうでした? ありがとうございます(笑)。

──すがすがしいぐらいに口が悪かったじゃないですか。「頭の悪いヤツと一緒にされたくない」的な。

北条 ああ、そういう意味ですね。「死ね」とかじゃなくて。

──そこまでじゃないですけど、ナチュラルな田舎者Disみたいな感じで。

北条 ああ、そうですね。それは小中高とあったんですけど、大学ぐらいからは周りにバカにする対象がいなくなったんです。特に大学院はみんな切磋琢磨するだけで、自分にとってすごくいい空間だったので、毒がなくなって。あと毒が出るとしたら結婚生活のみじめさぐらいです。鶴見済さんの『人格改造マニュアル』を引用して、これは分かるみたいな感じで書いた部分は全部カットになったんですが……。

──つまり、元旦那さんに洗脳めいたことをされてたわけですか……。

北条 自分の中では、あの洗脳のパートと同じプロセスをたどって元夫に依存してしまったという反省がものすごいので、そういうところでもうひと毒あったんです。でも、これからはそういう毒はあまり隠さなくてもいいのかなと思って。

──出したほうが深みが出て、北条さんがわかってもらえると思いますよ。

北条 そうですよね。

──毒を出してた前半は、おもしろすぎて読むのが止まらなくなりましたから。

北条 とりあえずエピソードはたくさんあるので、幼少期は8割ぐらいのエピソードを削ったんですけど、ひとつひとつが不様なんですよね。すぐ仲間外れになっちゃうとか。

──仲良くなりたいのに輪の中には入れないタイプで。

北条 傍から見たらすごい不様ですよね。自意識過剰で不様な人って一番不様じゃないですか。素でやってて失敗して不様っていうのはまだ愛らしさがあるんですけど、自分の場合は人を見下してるのに不様っていう。

──「みんなを見下している私が歩み寄ってあげたのに!」って(笑)。

北条 そしたら、それを見抜かれてお友達が離れていくっていう。

──自業自得感がすごいあるんですよね。

北条 そうなんですよね。ハムスターがずっとカラカラ回ってるみたいな状態で。自分はめちゃめちゃ頑張ってるのに、周りからは軽くバカにされてるみたいな感じの小中高を過ごして。

■頭はいいけど、人間関係がを作るのが下手

──「労働者階級の言語コードまで身に付けて」とか、ホントいいフレーズですよね。

北条 それはべつに自分が考えた言葉じゃなくて、バジル・バーンステインさんが考えた言葉です。

──それをナチュラルに使うと破壊力がすごいんですよ。

北条 なんでイースト・プレスさんはそこをダメって言わなかったんですかね……。今思えば差別と取られちゃうかもしれないですよ。他にもイースト・プレスさんがおもしろいなと思ったのが、私、大学生のときに恵文社っていう京都の書店に行ってたんですね。そこで社会学の文献を買いましたっていうエピソードがあるんですけど、「恵文社というのはヴィレッジヴァンガードを上品にしたような書店である」って書いたら、編集の方が「ヴィレッジヴァンガードファンの人に怒られる」って。

──ヴィレッジヴァンガードが下品な書店だと思われるから。まあ、ヴィレッジヴァンガードは下品なほうですよ(笑)。陳列センスはドンキと変わらないですからね。

北条 いや、私としては誉め言葉のつもりで書いたんですよ。

──わかりやすく説明しただけですよね。

北条 むしろわかりやすく持ち上げたつもりが、出版社の目から見ると「ヘタしたら訴訟リスクあるよ」っていう発言があって。今思えばなんで労働者階級の言語コードはOKなのかなって。

編集 あれは社会学で出てくる言葉なので。

──「労働者階級の言語コードまで身につけて歩み寄ったのに、なぜ私が嫌われるのか!」って、最高のエピソードでしたけどね。理由は間違いなくそこにありますよっていう(笑)。

北条 ……そうですかね?

──頭がいいのに不器用なことがすごい伝わる本なんですよ。

北条 そうなんですかね……。たぶんそうなんでしょうね、きっと。

──学はちゃんとあるんだけど、人間関係の作り方がものすごいヘタな人だなっていう。

北条 ヘタですヘタです。

──それがいままであまり伝わってなかったと思うんですよ。もっとうまく生きてるような人だと思われてたから、叩かれた部分もあるんじゃないかなって。

北条 うまく生きていたら、こんなことにはなっていませんよ……。

──これを読むと想像以上のヘタさが伝わるはずなので。

北条 私は自分のことをなんの取り柄もない凡人だと思ってて、自己評価が低いっていうコンプレックスもあるので、どうして叩かれるかわからなかったんです。

──フェイスブックのやり取りで、「なぜ人が怒るのかわからない」みたいなことを言ってたから、「もしかしたらアスペルガー的な発達障害じゃないですか?」ってボクが言って、それで病院にも行ったらアスペルガーだと診断されて、さらには前の旦那さんにもよくそう言われてた、みたいなエピソードもあったじゃないですか。

北条 言われてましたね、「アスペ」って。すぐキレる人とアスペが一緒にいたら、そりゃあ問題が起きますよね。

──共依存になっちゃうでしょうね。

北条 そう、共依存になるなーと思って。

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