【SMAP独立騒動】ジャニーズOBの成功を握る”遺伝子”とは?|平本淳也のジャニーズ社会学

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Photo by Pixabay(写真はイメージです)
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 SMAPの元メンバーの稲垣吾郎(43)、草なぎ剛(42)、香取慎吾(40)の3人がジャニーズ事務所から退所した。

 ジャニーズからの独立というものは、大手企業かあるいは官公省庁に籍を置く国家公務員を辞めるに等しいと例えるのが適切だ。それだけの社会的地位と安定が与えられているためで、その一方、ある程度稼いで起業や開業の夢を叶えようと一念発起する者は少なくない。そうした、ジャニーズを辞めた後輩からの相談をこれまでも数多く受けてきた。

 安定より確かなものはないという理由から彼らには独立を勧めはしない。だが、SMAP元メンバーにも言えることだが、ジャニーズを辞めたいという理由にはそれぞれ相当な背景がある。一度、嫌だと感じたり、辞めたいと思うと理性ではどうしようもなくなってしまう。

 無性に髪の毛を切りたくなったり、どうしようもなく人恋しくなったり……。そうした衝動は簡単には止められないし、会社を辞める際の感情はそれに近いものがある。問題の起因が人間関係となれば本人しか理解できない境遇があり、それを排除したいという思いは誰にも邪魔はできない。ただし、実際に行動するには相当な勇気も必要となる。

 ただし、SMAPの独立というのは簡単なものじゃない。国家公務員の中でもトップに君臨する事務次官級であり、退官後はそれ相当の受け皿、つまりそれなりの天下り先がないと話は進まないものだが、彼らほどのビッグネームであれば手にれた自由の大きさが、退官後の条件など吹き飛ぶご褒美になる。サラリーマンが一念発起して独立・起業するのとは根本的に立場が異なるが、国家公務員を辞める覚悟という点では似たような感覚だといえる。

 SMAPは特別としてもジャニーズから離れた人々にも理由は様々で、ジャニーズ側からの勧告もあれば自らの意志で退所を告げるか。ボクがいた頃のジャニーズは、今と違って完全に勧告が主だった。

 それもジャニーさんははっきりとは言わない。ジャニーさんは態度や振る舞いに本人の意思が強く現れるのだ。

「ユーはそろそろ……」

「ユーたちはもう……」

 そんな気持ちは十代の少年たちも敏感に感じ取る。当時のジャニーさんは今よりも若く、元気もあったので態度の落差でわかるのだ。属したグループが解散したり、ブームが去って継続的な仕事が減ってくれば自らが理解する。また当時はジャニーズJr.が30代、40代まで事務所にいられるような時代ではなく、20歳あたりに漠然とした定年制度を感じていた。

 今ではジュニアも中年から小学生まで一緒に踊っているが、以前は20歳ともなれば小学生と一緒に踊るのは精神的にも辛いものがあったので、20歳=脱ジャニーズという慣例で辞めていく人が多かった。しかし、中には引き止められるものが何人かいた。結局はジャニーズに残すか残さないかはジャニーさんの気持ちひとつで、そうした退社希望を告げる場で初めてジャニーさんと将来の話をして理解を深め合い、独立を先送りした男もいる。

 ただし、小学生の高学年あたりから二十歳まで毎日踊りと歌のレッスンを続けていた”箱入りジャニーズJr.”に、他業種への転職はなかなか考え辛い。ジャニーズにいた人間は自らのブランド力も理解しているため割と安易な考えで行動することが多い反面、ジャニーズを辞めた途端にファンも仕事が一気に減ったという経験は誰もがしている。

 独立後に仕事が減ったりすることで「干している」という印象にも繋がるが、ジャニーさんはそんなことはいちいちしない。ジャニーズ事務所もしかりである。実際にはジャニーズではなくなったそのタレントにメディアが興味を示さないか、またはジャニーズ側にテレビ局が忖度した結果でしかない。

 そうなって初めて元ジャニーズは見た目やスタイルだけでは生きていけない不安を感じ、業界で生きていくための「芸」の必要性に気付く。基本的にギターを持つことが多いが、「ジャニーズ」が好きなファンはその姿に違和感に感じて離れていく。ジャニーズファンが求めている理想像を理解した上で、それを体現し続ける。そんな覚悟が伝わるのはジャニーズOBの大先輩でもある郷ひろみさんだろう。田原俊彦さんも同じだが、こうしたところに元ジャニーズとしてのプライドを感じてしまうところだ。

 ジャニーズ独立後、ある程度の人気があれば「ファンからの上がり」で当面の生活費を稼ぐことができる。こうした信者とも言えるファンを持っていればある程度の安定は望めるがそれを手にできる者はごく一部だ。

 ジャニーズを独立してもなお芸能界で活動を続けていくという場合は、まず「ファンクラブ」の設立が急務となる。安定的な収入を確保すると同時に活動のPRを行うため、さらにはボランティアでの協力者や支援者を募るにも最も有効的な手段だからだ。これはジュニアレベルでも行う手段である。元祖はファンクラブ方式で最も大きな成功を手にしたのは光GENJIを経て独立した諸星和己。彼の活動資金はこのファンクラブが大きな土台を支えている。

 またこのファンクラブ運営での直近の成功例ではKAT-TUNを脱退した3人が挙げられる。赤西仁、田中聖、田口淳之介はファンクラブを設立して相当の安定的な収入を確保している。仮に年間5000円の会費だとして1万人いれば5000万円の基本収入が得られるので当面の活動も計画できる。とはいえ、いつまでも人気者ではいられないのがまたツライところだ。そんなに世間は甘くない。

 元KAT-TUN組は特別な例で、元ジャニーズというブランド・ネームと実績、経験を持ってしても芸能界では食うに困ることのほうが多い。そうして辛酸を舐めて社会人として年齢を重ね、いつしか異種業に転じるのがもっとも多いパターンだ。そうした中には、大企業の経営者や実業家、地方議員など政治家になった者もいるし、一般企業に勤めて大成した人も多くいる。

 芸能活動を続けるにしても前出の郷ひろみさんや田原俊彦さんは言うに及ばず、男闘呼組の高橋和也やイーグルスやソロで活躍した中村繁之らは、地道に一歩ずつ確実に歩んできた立派な成功者だ。劇団四季のミュージカルに出演するなど多岐に渡って活躍する川崎麻世さん、俳優として世界的にも活躍する本木雅弘さんなど枚挙にいとまがない。

 そして彼らに共通するのは、いつまでもジャニーズ在籍時のイメージそのままに、見た目やスタイルをキープし続けていること。ファンの夢を壊さず、「永遠のアイドル」をその姿で証明し続ける。それこそがジャニーさんから受け継いだDNAなのかもしれない。SMAPの元メンバーの稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人もそれがある限り、いつまでも惚れ惚れする姿を見せてくれるだろう。

著者プロフィール


ジャニーズ出身の作家

平本淳也(ひらもと・じゅんや)

ジャニーズ出身の作家で実業家。著書34冊のベストセラーを誇る売れっ子の物書きとして、テレビや雑誌など多くのメディアに記事やコメント提供。実業家としてはコンサルティング会社や芸能プロダクション、レコード会社などを運営し、タレントから起業家まで幅広い活動の支援を行っている。http://vjsv.com/

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