SMAP分裂後の”東山紀之プッシュ”とジャニーズ事務所の新基軸|平本淳也のジャニーズ社会学

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Photo by Pixabay(写真はイメージです)
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 SMAPが解散に至るまで様々な経緯があったが、その原因を作ったのは週刊文春に掲載された『激白!メリー副社長』だった。SMAPに対する糾弾が際立った内容とその事実に対して、直接攻撃を受けた飯島さん(当時のチーフマネージャー)が事務所を後にすることなった。

 そのときで印象に深かったのが、メリーさんが発した「ジャニーズの年功序列」と会社での「貢献度」を意味する言葉だった。もう過去で今更とも思うが、これからのジャニーズを憂い思うと実に面白いことを言っていたなと思い出した。

 取材のおり、何だか怒っているメリーさんは数人いた同行者のひとりで当時の事務所スタッフ(広報部長)に「しーさん(白波瀬さん)、ジャニーズのトップは誰なの?教えて!」と凄み、「マッチ、近藤真彦です」と迷わず答えさせた。

 まぁ、そりゃそうだよね、関係者からすれば、マッチで間違いはない。ただ、このときの質問からメリーさんが誰も問いてないSMAPとの比較で敢えて近藤真彦を掲げさせたのは、「ジャニーズ」というものを強く伝えたかったからだ。マッチはその顔とも言うべき存在で、例えばレコード大賞の大賞や近年では歌手としての最高峰「歌唱賞」など、ブランディングに貢献する肩書きをいくつも持っている。

 ジャニーズの場合、賞を取ったというより「ジャニーズが所属タレントに与えた」といったほうが正解だ。もっとも賞レースには不参加・辞退を長年貫いてきたが、マッチに限ってはジャニーズの取締役でトップタレントということもあり、その威厳と印象を強くするためにも、「そろそろ賞の一つ」でもというタイミングが重なった。そこでついでにNHK紅白歌合戦のトリもやっておこうとなった。もちろん、ジャニーズの場合はLDHのように1億円も不要である。

 そんなマッチは現在、前出のとおりジャニーズの取締役であり、またジャニーズのタレントのトップとして君臨する「顔」である。メリーさんはその顔は決してSMAPとは比較にならないということを言いたかったのだ。それはわからなくもないが、マッチを持ち上げてSMAPを追いやる結果になるとは誰も予想できなかったこと。メリーさんの言葉足らずと不器用さが不幸を生んでしまった格好だ。

 メリーさん的にSMAPは、旧光GENJIや男闘呼組らの後にデビューした年功序列で5番目のグループでしかなく、またジャニーズを二分、三分する派閥のような存在にも値しないと本当に考えていた。嵐や他のグループと比べて「だって、SMAPは踊れないじゃない!」とドヤ顔で主張もしている。踊れてナンボのジャニーズではダンス力はかなり重要だが、その割にトップに君臨する”ジャニーズの顔”としての近藤真彦さんが踊れないのは大きな矛盾だ。中居正広、木村拓哉、草なぎ剛の踊りはかなり上手なほうで相当の自信もあるのに、メリーさん基準ではそうではない。

 一方、こちらはキレっキレで踊れるジャニーズのナンバー2として君臨するのが少年隊だ。ちなみに少年隊はまだ解散していないし、3人ともジャニーズで健在だ。よく「少年隊ってまだあるの?」と聞かれるが、露出しているのが東山紀之だけなので、グループの存在には誰も興味を示せないところにあるが、少年隊は今でもジャニーズのナンバー2で、ジャニー&メリー共通の寵愛を受けている。いや、正確には寵愛を受けているのは東山だけといっていい。はっきり言って、高視聴率が望めるわけでもない東山だが定期的にいい仕事が回される。最近の東山の露出は凄まじく、SMAP騒動で被ったジャニーズ悪印象の払拭に忙しい。

 しかし、東山の情報番組のMC(司会)はやりすぎだ。新しく始まる情報番組でジャニーズが「朝の顔」になるのは不思議ではないが、そこで東山というのは誰しも疑問に感じるはずだ。ジャニーズだから何でもうまくこなせるだろうが、普通にキャスティングを考えたら東山になるはずがない。しかし、こうした不思議な大仕事を回されるのも東山ならではといえる。

 さらにはスポーツ新聞では「大型連載」と打たれた東山のアゲ記事が掲載されるなど、やりすぎなほどの「東山推し」が計られている。ジャニーズのナンバー2として東山の安定感を求めるのと同時に、SMAP亡き後の新体制の露骨なアピールといえるだろう。

 しかし、視聴者からすれば、東山は非常に中途半端なポジションにいる男だ。今では完全に俳優と化しているが、天下のNHK大河ドラマで主演も経験しているのに、「好きな俳優ランキング」のようなもので上位入りしたこともないし、大ヒットした作品もない。東山の他にこのようなポジションの俳優は見当たらない。

 木村や剛、あるいは山下智久ら他のジャニーズタレントのように視聴率も演技も脚本の不出来も責められない。内容が駄作だろうが誰もそれをネタにしないし、批判もしない。つまりあまり世間に関心を持たれていないのだ。ある意味それは非常に恵まれた環境だし、ジャニーズのナンバー2はこんな特権が得られるのかと興味深い存在だ。

 かつてマッチは芸がないとよく言われ、東山は芸しかないと評されていたが今の時代、タレントとしてどちらも存在感あるわけではなく、お茶の間にとってはSMAPのほうが何倍も需要がある。世間とは大きな温度差があるものの、ジャニーズの世界ではジャニーさんとメリーさんが愛する人が何よりも重要なのだ。

 また、マッチや東山だけでなく、ジャニーさんが大事にしている存在として、KinKi Kidsと滝沢秀明も忘れてはいけない。SMAP亡き後のジャニーズ巻き返しにキンキとタッキーは欠かせない存在であり、マッチや東山にはない現役感と華を持っているだけに、今後の最重要人物とも言える。

 ジャニー喜多川の最高傑作は堂本光一と滝沢のふたりだ。観客を前にして歌って踊って演じて魅せられる最高の舞台座長を務められるのは光一とタッキーだけで、リアリストのジャニーさんは「目の前の感動」を最重要視する制作家であり、自らの思い(脚本・演出)を現実に描いてくれるふたりは、ジャニーズの歴史においても特別な存在とされる。

 また、ジャニーさんの場合、大切なものは手元に置いておきたい性格で、本当にかわいいタレントは逆に露出させない傾向にある。もちろん芸能界だからある程度の露出はさせるものの、仕事の内容もジャニーさんが好きな分野、つまりテレビより舞台という傾向になる。

 また、下積みが長くデビューまでに時間がかかっているほど愛されているという皮肉な面もある。その意味ではふたりとも相当の時間をかけられていて、光一のジャニーズ入りは12歳で、キンキのデビューまで6年もの時間を要している。その光一に憧れてジャニーズ志願したタッキーの事務所入りは13歳でデビューまで7年もかかった。

 ジャニーズでの下積みは他の芸能人とは異なり、かなり恵まれた下積みでもある。ジャニーズに入った直後から周囲からはタレント扱いされ、テレビやイベントには出演できるし、ファンもつけばプレゼントもたくさんもらえ、すぐに有名になった気分が味わえる。それだけにデビューまでの時間が長くても苦にはならないし、ジャニーさん的には大切なものを「勿体なくて」「出し惜しみ」しているという感じもある。

 ジャニーさんが芸能に携わった1950年(昭和25年)から、これまで実に67年の長い歴史を持つのがジャニーズだ。少年野球チームを率いていた弟は、四谷でバーを営む姉と一緒に、この巨大なエンターテインメント集団を創り上げた。その中で黒い歴史も同時に積み上げてきたことは否定しないが、今年91歳と86歳になる姉弟には引退の文字はなく、生涯現役であることから最低でも東京オリンピック(2020年)までは現場に居続ける。

「最も多くのコンサートをプロデュースした人物」、「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」、「最も多くのチャート1位アーティストを生み出したプロデューサー」のギネスブックに三冠を保有する世界のジャニー喜多川としての集大成は千載一遇でもあるそのオリンピックでの開会式だ。

 オリンピックは世界中が同時に注目する唯一かつ巨大なステージ・イベントだ。生きている間、そしてこのタイミングは千載一遇であり、エンタテイナーとして世界一のジャニーさんならば最後のチカラを振り絞ってでも手に入れ成功させたい、世界中を感動させたいと、そしてその夢が叶ったらもう悔いはないはずだ。

 ジャニー喜多川の名は日本の芸能史に永遠と刻まれるのは間違いない。ジャニーズ出身者としては嬉しい限りだが、ファンを悲しませるスキャンダルは勘弁願いたいと切に思うところだ。

著者プロフィール


ジャニーズ出身の作家

平本淳也(ひらもと・じゅんや)

ジャニーズ出身の作家で実業家。著書34冊のベストセラーを誇る売れっ子の物書きとして、テレビや雑誌など多くのメディアに記事やコメント提供。実業家としてはコンサルティング会社や芸能プロダクション、レコード会社などを運営し、タレントから起業家まで幅広い活動の支援を行っている。http://vjsv.com/

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