好調・広島ファンが抱える「FAトラウマ」 【二宮清純のスポーツコラム】 (1/2ページ)

日刊大衆

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 赤ヘルの快進撃が止まらない。7月8日の東京ヤクルト戦で50勝(28敗2分け)目をあげ、2年連続で50勝到達リーグ一番乗りを果たした。

 今季の広島は、昨季、チームの四半世紀ぶりのリーグ優勝に貢献した「男気」の黒田博樹が抜け、昨季の沢村賞投手クリス・ジョンソンも4月から5月にかけて戦線を離脱するなど逆風の中でのスタートだった。だが5月28日に阪神から首位の座を奪い返すと、“脚力”の違いを見せつけ、7月11日現在、2位・阪神を8ゲーム引き離し、独走を続けている。

 我が世の春を謳歌する広島ファンだが、中には“FAトラウマ”を引きずっている者もいる。こんな声を聞いた。「広島の主力は田中広輔、菊池涼介、丸佳浩、鈴木誠也、會澤翼など関東出身の選手が多い。FA権を取得したら在京の人気球団、つまり巨人に移籍する選手が出てくるのではないか……」

 過去に広島から巨人にFA移籍した選手は3人いる。95年の川口和久、2000年の江藤智、14年の大竹寛。江藤は東京、大竹は埼玉の出身である。では鳥取出身の川口はなぜ? 「女房のオヤジがガンになり、東京に帰るという。それが原因でFAしたんです。すると監督の長嶋茂雄さんから“待ってるね”と電話がかかってきて……」

 広島からFA移籍した選手は先の3人だけではない。主なところでは03年に金本知憲、08年には新井貴浩がタテジマに袖を通した。

 その一方で、FA権を行使して広島にやってきた選手はひとりもいない。広島ファンが「FA」の2文字に敏感になるのも無理はない。しかし、以前とは状況が変わりつつある。04年に63億円だった売上高は、新球場効果もあり15年には148億にまで伸びた。黒田に単年でポンと6億出した際には他球団を驚かせた。

 ただ海を渡るとなった場合、話は違ってくる。MLBに挑戦した野手は、まだひとりもいない。台所の事情は好転しても選手の夢までは阻止できないのが現実である。

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