芸能界の”奴隷契約”と置屋事業対策に進む公正取引委員会|やまもといちろうコラム (3/3ページ)
■時代の流れに合わせることも
また、先行投資で言うならば、とりわけ女性タレントや俳優は「土木工事」が入ることがあります。人間、誰しも生まれつき美しいわけではありません。売れる前の投資は当然ながら本人の同意の元で事務所が肩代わりすることになりますが、演技や歌唱のレッスンから生活の面倒まで見る芸能界ではどうしても一般的な就労の現場と隔絶した状況が容易に発生することになります。
プロ野球でも、独身寮完備で数年間の生活を掌握して、トレーニングも施してチーム編成をするにあたって、やはり安定して雇用できる独占使用期間が労使の間で合意されないと厳しいという面はあります。素質はあるだろうけど来年契約できないかもしれない若手にチャンスを与える監督はいません。
おそらくは、公正取引委員会での話し合いも(まだ途中経過ですが)若くして得られる巨額報酬もあり得る仕事であり、それに対する専属契約が長期間に渡るところが、職業選択の自由という原則を歪めているのではないか、という話に立ち返ると思います。芸能界やスポーツの世界が、原理原則を追い求めるのであれば、時代の流れに合わせて飲まなければならない部分はあるでしょう。
しかしながら、実際に起きることはもっとエゲツないわけですよ。結婚の決まった女優が、今後はおそらく仕事が入らないと事務所が見切ると一晩数千万の高級コールガールとして人身売買の具になったりする世界です。人としての幸せというレベルの話ですらありません。ぶっちゃけ、昭和の頃から現在に至るまで、また日本に限らず韓流ブームからハリウッドにおいてすら、日常的に発生している世界である以上、何が正解か、どうあるべきかはとても一口には言えないよなあという風に思うわけであります。
それもこれも、イメージと夢を売る世界と、いい女を抱きたいという金持ち旦那衆との世界観の中で、うまく最適解を紡ぎ出すべき仕組みが影に隠れているのが問題だ、ということなんでしょうか。
著者プロフィール
ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)
やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研