タックスヘイブンを利用した相続税・贈与税の租税回避に対する今後の展望

心に残る家族葬

タックスヘイブンを利用した相続税・贈与税の租税回避に対する今後の展望

1年半が経過したパナマ文書の公表。公表後、2016年5月に財務省はパナマと租税条約を締結した。これは一部富裕層の租税回避行為を監視・封込めをする目的で締結されたものだ。具体的には、マイナンバーと紐づいて、パナマの日本人銀行口座を監視し、租税回避行為があった場合、直ちに摘発できるよう規定されている。では何故、パナマ文書と相続税の節税対策が繋がるのかと言うと、パナマ文書の公表で、タックスヘイブン(低課税地域・租税回避地)を通して、日本の所得税や相続税の課税を免れていた一部富裕層が明らかになったことから、国税局が対策に本腰を入れ始めたからだ。

■タックスヘイブンで有名なシンガポール

日本に限ったことではないが、一部の富裕層はタックスヘイブンに自身が所有する資産を移し、親子で居住することで所得税や消費税、相続税並びに贈与税を免れるか、又は著しく低い税額を納付していた。

一例を挙げると、ここ10年程度顕著だったのがシンガポールだ。シンガポールは相続税並びに贈与税が無く、所得税は条件次第ではかなり低額になると聞いている。親子で5年以上(当地の規定)シンガポールに居住した後、親が子に相続乃至は贈与させた場合、相続税並びに贈与税は一切課税されない。当然日本では節税対策をしない、又は条件次第では多額の税額が発生することになる。

こういった状況を踏まえ、課税の公平を確保するべく各国が動き出した。日本では2016年10月25日、国税庁が国際戦略トータルプランを発表し、一部の富裕層が所有する海外資産の監視の強化を図っている。

■今後は各国と連携した海外口座の情報の監視が一層強化される

今後はどうなるのかと言うと、国外財産調書制度等の有効活用を始め、自動的情報交換制度が施行される。当該制度は、日本が租税条約を締結している国連加盟国並びに地域において、非居住者の銀行口座等(証券会社の取引口座等も含む)の残高や利子と言った情報を年に一回交換し、情報を各国で共有する制度だ。更に、徴収共助制度も施工される。簡単に説明すれば、日本のみでの対応は困難となったので、各国と連携して銀行口座の動きを監視すると共に、租税の徴収についても各国で融通しあい租税回避行為を防止することだ。制度の見直しや、新たな制度の制定等で一部の富裕層の租税回避行為の監視が進みつつある。その切欠がパナマ文書の公表にあったと言えるのかもしれない。
 
現時点では合法であるとはいえ、タックスヘイブンを利用した極端な租税回避行為は忌避されるべきだと考える。租税の公平を蔑ろにすることは、許されることではない。しかしながら、法を順守した節税対策ならば何の問題もない。長期的な視点から対策を練り、確実な節税を心掛けて欲しい。

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