熟成醤油で味付けた韓国牛のカルビ焼き、松茸石焼ご飯、キムチ……そして＜独島（ドクト）海老＞などと称するエビが饗されたのは、先日米国大統領を迎えた韓国政府主催の夕食会だった。

　言うまでもなく独島とは、韓国に不法支配された島根県の竹島のこと。さらには2015年末の日韓合意で「最終的かつ不可逆に解決」したはずの従軍慰安婦（だったと称する老婆）も、その会に出席。無理やりトランプ大統領にハグさせたことが大きな話題（注１）となったのは、記憶に新しい。

　つまり韓国は、対北朝鮮で日米韓の連携を深めなくてはならぬ折り（注２）、そして米大統領を迎えた最高の晴れ舞台に於いても、徹底的に＜反日＞姿勢を貫いた。トランプ大統領に、日本の悪口（注3）を＜告げ口＞する場にしてしまったのだ。

「トランプ大統領が日韓を最初の訪問先に選んでいる中、日米韓の緊密な連携に悪影響を及ぼす動きは避ける必要がある」（菅義偉官房長官）

　さすがに菅官房長官も諫めたが、韓国政府はどこ吹く風。国がこの調子なのだから、民間は日韓合意など歯牙にもかけない。それを象徴するトラブルが、日韓合意に骨を折った米国の有名都市からやって来た。

　米カリフォルニア州サンフランシスコ（SF）市議会が、民間団体から慰安婦像と＜性奴隷＞などと書かれた説明の碑の寄贈を受け入れることを可決。当初、像と碑は私有地に建てられていたが、土地ごと寄贈されたため、米国内で＜慰安婦像の公共物化＞が進んでしまった……。

■日米離反に動く韓国の背後に”民間団体”の存在が

　米国内の公共物化は前例もあるが、SFは世界的に有名な大都市であり、日本との縁は歴史的にも深い。その市議会が、全会一致で慰安婦像を受け入れてしまった衝撃は大きい。11月24日までにエドウィン・Ｍ・リー市長が議会に対して拒否権を発動しない限り、慰安婦像の公共物化が確定する。

「非常に残念。拒否権行使を求める手紙を（リー市長に）送った。期限まで対応を待ちたい」

　と語ったのは、この問題に以前から強い懸念を表明していた吉村洋文・大阪市長。正式に公共物化されれば、大阪市とSＦ市の姉妹都市関係を年内に解消すると表明している（注４）。

「実はこれを仕掛けた民間団体は、中国系米国人の団体。おまけにメンテナンス費用として、約21万ドル（約2400万円）が同時に寄贈される。SF市議会としては日本の言い分の真偽など検証するつもりもなく、影響力のある中国系団体が土地も金も寄付してくれるということで、通ってしまった」（外信部記者）

　慰安婦だから韓国系の動きかといえば、そうでもない。海外における慰安婦問題の誤った拡大には、中国系の動きが大きい。肝心の中韓本国は、米軍のTHAAD（終末高高度ミサイル防衛システム）韓国配備などを巡ってギクシャクが続いていたが、海外における＜反日活動＞に於いては共同戦線を張っているのだ。

　――いや、本国同士も急速に関係を改善する兆しはある。中国外務省は一時、

「韓国が、１．THAAD追加配備をしない。２．米国のミサイル防衛システム（ＭＤ）に参加しない。３．韓米日安全保障協力を軍事同盟に発展させない」

　の3点を約束した、と発表。その後ややトーンダウンしたが、文在寅（ムン・ジェイン）大統領は、中国への＜媚び＞を隠さない。かくして北朝鮮騒動の影で慰安婦問題の蒸し返し、領土侵略の正当化など、中韓のタッグが蠢めき始めた。米本土で慰安婦像の公共化を狙うのも一端で、狙いはハッキリしている。日米を離反させ、米国の影響力を東アジアから排除することだ。

　＜独島エビ＞を笑っている間に、日米安保条約というタイを釣られる（破壊される）かも知れない。

（注１） 大きな話題…さすがに普段は偏向がちな番組でも、これには批判的なトーンが多かった。
（注２） 日米韓の連携を深める折り…トランプ大統領のアジア歴訪の目的がこれ。
（注３） 日本の悪口…領土問題も歴史問題も、事実に基づかない話ばかり。
（注４） 姉妹都市解消…市長の意向に対して、大阪市議会が反対している。

著者プロフィール

コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック＆プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ