不安の中で自由に笑う表参道の交差点 #東京と働く。 (1/2ページ)

マイナビウーマン

不安の中で自由に笑う表参道の交差点 #東京と働く。
不安の中で自由に笑う表参道の交差点 #東京と働く。

表参道のモントークカフェでさっきから女ともだちのひろみとだらだらしゃべっている。終電まで、あと20分くらいしかない。駅員に急かされながらちょっと遅れてきたぎゅうぎゅうの千代田線に飛び乗ることも一応、考える。恋愛の話や、凶悪犯罪の話とかをしながら、ちらちらとまわりを見る。ここは私たちの東京の定点観測地点。今日も異常なく、しゃれた店員が、オシャレしてきた女子会の女の子たちやカップルにコーヒーとケーキを運び続けている。

私は都会のどまんなかで生まれた。文房具を買いにいくといえば銀座のITOYAだったし、友達と待ち合わせてラフォーレ原宿の地下一階の雑貨屋に変な形のペンケースやヘアゴムを買いに行ったりして小学生時代を過ごした。中学生になったら少しませて竹下通りで売ってる派手でへんてこな服を買ってプリクラを撮ったし、高校生になれば当たり前に美大受験用の予備校に行った。それを、イージーモードと言われればそうですかとしか言いようがない。でも、親の機嫌を損ねないように20時くらいには帰宅して、ロックバンドが大好きなことや学校以外の友達ができたことを隠さなければならない毎日は息ができない沼の中にいるようだった。寝る時間が決まっていることやごちゃごちゃしたベッドカバーの色、テレビがずっとついていること、そういう思い通りにならないことの中で、いつか街にいる大人みたいに自由奔放に街を歩いて笑うことを夢見ていた。それが私の東京だ。東京に住んでいても手に入らない、蜃気楼みたいなトーキョー。

その頃の東京にいる大人って、なんだか自由でいることを身体中で体現してて素敵だった。カジュアルな古着やパンクファッションが花を咲かせた個性派全盛期、真っ赤なリップでくしゃっとした笑顔を存分に披露する雑誌のストリートスナップに登場する大人を眺めてはため息をついた。無邪気な子供みたいに自由奔放でいることが街にいる大人の美徳であることに心底しびれたんだ。

「なんか今日タクシーで帰るのでいいや」 満を持してそう言った私にほんとう!とそれまで深く腰掛けていたソファから身を起こしてひろみが嬉しそうに声を上げた。 「いいんですか。じゃぁ私もう一杯飲んじゃお」とすかさずコーヒーを頼む。

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