玉木正之のスポーツ内憂内患「貴乃花親方に目指してほしい“角界改革”」 (1/2ページ)

アサ芸プラス

玉木正之のスポーツ内憂内患「貴乃花親方に目指してほしい“角界改革”」

「言葉」とは、使われすぎると意味がわからなくなってしまうものらしい。

 スポーツの世界では「感動」という言葉がそうだ。最近は「感動」だらけで、本当に素晴らしい感動がどんなものか、わからなくなったような気がする。

 フィギュアスケートで盛んに使われている「世界観」という言葉も、私にはまったく意味がわからない。

 ドイツの大哲学者カントが最初に使ったとされるこの言葉は、「個人にとっての人生に対する感想」を表す「人生観」よりも大きな意味を持つ言葉として、「この世の中は人間にとってどんな意味があり、人間はどんな役割を果たすべきか」という問いかけに答える考えを示すものだという。

 平昌五輪での羽生結弦やザギトワの演技が見事だったのは認めるが、そこに彼らの「世界観」が表れていたと言うのは少々オーバーすぎる表現というほかない。

 スポーツ界に留まらず、あらゆる場所で(特に政治家たちに)使われている言葉で理解できないのが「改革」という言葉だ。

 最近では角界の貴乃花親方が「改革派」と言われ、日馬富士の暴行事件の事後処理の不備などを主張。公益財団法人日本相撲協会の認定機関である総務省に告発状を出すなど、「改革」を推進する姿勢を見せていた。

 ところが、同部屋の十両力士の貴公俊が春場所の控え室で付け人に暴力を振るったことから、告発状を取り下げ、「一兵卒として出直す」ことを宣言した。

 確かに角界に横行する暴力沙汰に強く反対していた親方の部屋の関取が、他の力士などが大勢いる本場所の控え室で出血させるほどの暴力を振るったのは、貴乃花親方の「暴力根絶」の主張を無意味にするほどの出来事だったと言える。

 しかし横綱二人(白鵬、鶴竜)が見守る中で、もう一人の横綱(日馬富士)が他の部屋の力士(本場所で戦う相手)を暴行し、頭に9針も縫うキズを負わせた事件と、今回の事件とは根本的に内容が異なるはず。その事後処理に不備があり、自らに科された処分も不当だと主張して告発状を提出したのなら、その告発は角界の「改革」推進のために、取り下げるべきではなかっただろう。

「玉木正之のスポーツ内憂内患「貴乃花親方に目指してほしい“角界改革”」」のページです。デイリーニュースオンラインは、週刊アサヒ芸能 2018年 4/12号玉木正之貴乃花フィギュアスケート相撲スポーツなどの最新ニュースを毎日配信しています。
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