【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第8話 (1/4ページ)
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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第7話 ■文政七年 春(3)「他にも色々あるぜ」
国芳は「平知盛亡霊と弁慶」の絵を脇に置き、次の一枚を取り出した。
画像:国芳「吉野山の横山覚範と佐藤忠信の戦い」ボストン美術館蔵
「これア四年前くれえに描いたやつだ。義経の家来の忠信と横川覚範の吉野山での一戦」
「うわ、凄い数の矢ね」
「でもやっぱりまだまだだな!全体に灰色が多すぎた。今ならもっと色を工夫するかな」
「・・・・・・うん」
みつの伏せた睫毛が、儚げにゆれた。
目もとには、何か濃い陰翳を宿している。
国芳は少し訝(いぶか)しんだ。
「ねえ、国芳はん」
「ん?」
「あたしの目、好き・・・・・・?」
不意にみつが訊いた。