ビートたけしの名言集「新潮社から頂いた記念本をオークション」 (1/2ページ)
「おい、これ、お前にやるよ」
楽屋に入ってきた殿は、パッと見、明らかに高級感漂う、革で装丁されたご本を2冊、ご自分のトートバッグから取り出すと、唐突にわたくしに預けてきたのです。頂いた本を手に取り、まじまじと確認すると、1冊は「アナログ」。もう1冊は「バカ論」と書いてあるではないですか。はて? これは? 本を手に持ち、少しばかり混乱していると、
「それよ、どっちも10万部を超えた記念に、新潮社から送られてきたんだよ」
と、殿はぶっきらぼうにつぶやいたのです。なんでも新潮社さんでは、10万部を超えたベストセラーには、オール革張りの装丁で作り直した本を、記念として著者に贈呈するしきたりがあるらしく、殿が去年上梓した2冊の本も、めでたく10万部を超えたため、このたびの贈呈となったのでした。
しかし、なぜにそんな、縁起の良い大変貴重な記念本を、文学的要素の皆無なわたくしに渡してきたのか? 皆目見当もつかず、ただただ、2冊の革張り本を手に持ち、殿の正面で立ちつくしていると、
「週刊新潮がよ、今回の独立で俺のこと、あーでもないこうでもないとけっこう変なこと書いたろ? だから新潮社には腹が立ってんだよ。な、だからそれ、お前にやるから、とりあえず好きにしろ」
と、殿は吐き捨てるように言い放ったのです。「殿、頂くのはうれしいのですが、本当に僕がもらっていいんですか?」と、当然の疑問をすぐさま返すと、
「いいよ。お前がオークションに出すなり、古本屋に持ってくなり、好きにしろ」
と、かなりアバンギャルドな提案を口にした殿は、瞬時に“自分で言って思いついた!”といった表情に変わると、
「そうだ! これよ、ほんとにオークションに出すか? 出品者、足立区の北野武さんっつって、どこかのオークションに本気で出すか!」
と、やや興奮気味に続けたのです。そして、
「だったら、あれだな。オークションに出してよ、それでお前が『100万円で落札希望』なんて、こっちでヤラセで値段をどんどん吊りあげちまうか」
と、さらにアナーキーな案を追加してきたのです。