災害や非常時の持ち出し品として何よりも優先されてきた先祖代々の位牌 (1/3ページ)

心に残る家族葬

災害や非常時の持ち出し品として何よりも優先されてきた先祖代々の位牌

葬儀や墓について話すことはあっても位牌が話題になることは少ない。位牌は墓・仏壇と共に日本の葬儀に欠かせないものだ。位牌がある家の人間は地震や火事など災害が起こった時、何を置いても位牌だけは持って逃げたものであるし今でも同様だと思われる。それほど大切な位牌だが墓や仏壇に比べて意識に上がることがないのは位牌とは何であるかが知られていないからだろう。しかし位牌はある意味で墓・仏壇よりも我々にとって大切なものである。位牌・墓・仏壇、そして我々が行っている葬儀そのもの。その発祥は現代のほとんどの葬儀を執り行っている仏教ではなく「儒教」にある。


■儒教の影響を受けている日本人の死生観

日本は神道、仏教、儒教、陰陽道などが複雑に混淆された独特の宗教体系が形成されている。その中でも葬送儀礼の面においては儒教の影響が強く、現代に伝えられている墓・仏壇は儒教文化によるところが大きい。そもそも現代の日本人の死生観は儒教の死生観が根底にある。

例えば日本古来の神道では死者は山の向こうへ行くなど「魂」や「あの世」の定義は曖昧なものであった。元々、非体系的な自然崇拝だった神道が宗教として形を整えるのは仏教の影響が大きく、明確に死後の世界のビジョンを確立するのは江戸時代後期の平田篤胤の登場を待たなければならない。しかし現代でも神道の教義が固定されているとは言い難い。

■日本人と「魂魄」

また葬儀といえば仏教であるが、仏教の元々の思想は「空」である。一切の存在が「空」であり、世界のすべては幻に過ぎない。我々の「自我」もまた確固たる存在ではない。死後の「魂」も仏教では輪廻転生を採用しているので、この世に帰ることはない(注)。現代で行われている葬送儀礼や墓、位牌の存在は日本式にアレンジされており独特の意味が構築されているが、本来でいえば仏教の教えとは異なる。

一方、儒教では人間とは霊的存在である「魂」と物質的・肉体的存在「魄」が合わさった「魂魄」であるとする心身二元論である。死後は「魂」と「魄」に分離し、「魂」は天上へ行き、「魄」は土に還る。日本人にこの二元論が浸透していることは実感できるだろう。いくら科学が発達しても、魂のような存在があり、死ねば魂は「あの世」へ行く。

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