桑田真澄、佐々木主浩…甲子園レジェンドは「動く教科書」だ【二宮清純のスポーツ一刀両断】

日刊大衆

 夏の全国高校野球選手権100回大会を記念しての目玉企画「甲子園レジェンド始球式」は大好評だった。最年少は30歳の本間篤史さん(駒大苫小牧)、最高齢は85歳の中西太さん(高松一)。始球式を通じて、伝統ある高校野球の過去と未来が一本の糸でつながったような印象を受けた。

 驚いたのは85歳の中西さんがノーバウンドピッチングを披露したことだ。さすが現役時代、「怪童」の異名を欲しいままにした強肩、強打の三塁手である。「本番に強いでしょう」と笑っていた。昔取った杵柄、とはこのことだろう。

 レジェンド始球式にはノスタルジーに加え、“無言のレッスン”という利点もある。往年の名選手は齢を重ねても、現役時代とフォームが変わらない。基本の大切さを痛感させられた。たとえばPL学園を卒業後、巨人などで活躍した桑田真澄。自身が持つ甲子園通算20勝は、今後もおそらく破られることはないだろう。身長174センチとピッチャーとしては小柄ながら、プロでも173勝を記録した。左足を高く上げるダイナミックなフォームは現役時代のままだった。糸を引くようなストレートがキャッチャーミットにおさまった瞬間、スタンドからはオオーッというどよめきが漏れた。

 同じ日に“登板”した“大魔神”佐々木主浩(東北)も負けていなかった。こちらは日米通算381セーブ。ウイニングショットのフォークボールに期待がかかったが、投げたのは真っすぐ。インハイにビシッと決まった。

 これはプロ野球のマスターズリーグについても言えることだが、投手にしろ野手にしろ、フォームは昔のままである。筋力の衰えにより、スピードとパワーがなくなっただけだ。

 言ってみれば、彼らは“動く教科書”である。名選手たちの体の使い方を見ているだけでも勉強になる。マスターズリーグの試合などは教材用のDVDにして売り出してもいいのではないか。野球の世界も、もっとシニアを有効活用してもらいたい。

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