水中洞窟で発見された氷河期の巨大クマの骨(メキシコ) (1/3ページ)
Roberto Chavez-Arce
1万年以上前に訪れた最後の氷河期では、北米と南米とを結ぶ”橋”にオオカミのような肉食獣や地球史上最大のクマがうろついていた。
橋――すなわち中米にあるメキシコの水中洞窟の底には、太古の時代の墓場がある。
ここから、大きく顔の短いクマ(Arctotherium wingei)の頭蓋骨、オオカミのようなイヌ(Protocyon troglodytes)の骨、さらにはナマケモノ、バク、サーベルタイガー、クーガー、ゾウに似た動物ゴンフォセレなど、さまざまな骨が発掘されており、中には1万2000年前の人骨すら見つかったという。
・巨大水中洞窟の闇に潜む狡猾なトラップ
骨が発見されたのは、ユカタン半島東海岸に伸びる世界最大級の水中洞窟、サク・アクトゥン洞窟のオジョ・ネグロ穴だ。
オジョ・ネグロとはスペイン語でブラックホールのことで、後期更新世の名残りを今に伝える天然のタイムカプセルのようなところだ。
ここは数千年前、狡猾なトラップのような場所だった。なにしろ落ちれば60メートルはあり、何も知らない動物がたくさんの命を散らせてきたのである。
やがて氷河が解けて、無数の死体が折り重なる穴を水で満たす。こうして彼らは永遠に水の中に保存されることになった。
Roberto Chavez-Arce
・南米でしか発見されていなかった動物の骨
熱帯の中央アメリカで大昔の骨が発見されることは滅多にない。
だが過去12年間で収集されてきた骨の中に大型のクマやオオカミのものがあったことが衝撃だったのは、それだけが理由ではない。
これまで、この2種は2000キロ以上も離れた南米でしか発見されたことがなかった。