物理学者が「生命は2次元世界でも生存できる」ことを試算(米研究)

カラパイア

物理学者が「生命は2次元世界でも生存できる」ことを試算(米研究)
物理学者が「生命は2次元世界でも生存できる」ことを試算(米研究)

Zuhria Alfitra/iStock

 宇宙は膜のような時空であるとか、世界は10次元あってヒモでできているとか、そうそう、最近ではシュレーディンガーの猫の助け方を発見したなんてのもあったっけ――。

 物理学者たちの考えることは素人にはいつも理解不能なわけだが、彼らがまたすごいこと計算ではじき出した。

 なんでも生命は2次元世界でも生存できるかもしれないそうだ。
・なぜこの宇宙は3+1次元なのか?

 私たちは3次元の空間と1次元の時間、つまり3+1次元の世界に住んでいる。だが、なぜ4次元の空間や2次元の時間がある世界ではないのか? これはここ数十年、物理学者が考察してきた疑問だ。

 その結論は、4次元空間や2次元時間を持つ宇宙では私たちは存在できないというもの。

 これを「人間原理」という。この宇宙は、それを観察する存在が生きられる条件を満たしていなければならない。だから私たちが存在する以上、その宇宙が3+1次元なのは必然だというわけだ。


・もっと単純な宇宙はどうか?

では2+1次元のようなもっと単純な宇宙はどうだろう?

 物理学者は、そこでは生命の生存を可能にする複雑さが得られないと考えている。また、重力も作用できないだろうし、それならば太陽系のような天体だって形成されることはない――はずだ。

 しかし米カリフォルニア大学デービス校のジェームズ・スカーギル氏は、『arXiv.org』に掲載された論文で、そうした2+1次元に関する予想とは少々違う説を提唱する。

0_e6
NASA

・あつらえたかのような宇宙

  そもそもなぜこの世の物理法則は生命の都合に合わせたかのようにできているのか?

 たとえば電磁相互作用の強さを表す「微細構造定数」(約137分の1)はあつらえたかのようで、それがわずかでも違うものなら原子やより複雑な物体は形成されなかっただろう。こうなれば当然生命は存在できない。

 1990年代、現在MITの物理学者であるマックス・テグマーク氏は、宇宙の次元について似たような議論を行った。

 もし1次元を超える時間次元があったとしたら、物理法則は観察者が予測をするために必要な特性を失っていただろうというのだ。もちろん物理学者などという職業は成り立たず、おそらく生命だって存在できなかったろう。

 4次元空間の宇宙はどうだろうか。この宇宙では、ニュートンの運動の法則がちょっとした摂動に対してきわめて敏感になる。安定した惑星の軌道などは望めなくなり、太陽系が形成されることもないし、今あるような原子や安定した構造ができることもない。

 結局、現在の宇宙よりも次元が多いところでは、私たちが存在するための条件が整わないということだ。だが、次元が少ない場合はそれほど確かではない。


・2次元空間にも重力が生じる可能性

 たとえば2次元では一般相対性が機能しなくなり、重力もなくなるという説がある。

 しかしスカーギル氏の考えは違う。もっとシンプルで、純粋なスカラーの重力場なら2次元でも機能できるだろうというのだ。ならば安定した軌道もできるし、それなりの宇宙論も通用する。

iStock-1069402886_e
Luccy_lapka/iStock

・生物の神経ネットワークの複雑性

 だが彼の理論でより印象的なのは、2+1次元の世界でいかにして複雑性が生まれるかという点だ。それは生物の神経ネットワークの複雑性に着目したもの。生物の神経ネットワークのさまざまな特徴は、2次元空間でも再現可能なはずだというのだ。

 そうした特徴の1つには、少ない数のステップで複雑なネットワークの移動を可能にする結合パターン、すわなち「スモールワールド特性」がある。
 

 また脳のネットワークがレジームとして機能している点も挙げられる。それは高い活動と低い活動との微妙なバランスをとっており、これを「臨界挙動」という。

 また、この特徴は、モジュール型の階層を持つネットワーク(小さなサブネットワークが結合して形成される大きなネットワーク)でしか実現できないと思われるものでもある。

3_e
arxiv.org/abs/1906.05336

・2次元世界で生物の複雑性は生まれるか?

ここでスカーギル氏が問うのは、スモールワールド特性、臨界挙動、モジュール型階層といった特徴は2次元の世界にはないのだろうか? ということだ。

 ぱっと見はありそうもない。2次元のグラフでは、ノードが互いに交差する辺で結合されるからだ。

 だが、それでもスカーギル氏は、2次元ネットワークでもモジュール型に構築することが可能で、そこにきちんとスモールワールド特性が備わっていることを証明した。2次元ネットワークでも複雑な挙動を生み出せるということだ。

 もちろん、これだけで2+1次元の宇宙で生命が存在できるという証明にはならない。また彼自身、今回の2次元ネットワークで生物が見せる複雑な挙動が可能になるのかどうか確かめるには、もっと研究が必要であることを認めている。

 だが2+1次元の宇宙に生命が存在できないという主張への反論ではある。人間原理で楽をしようという物理学者たちには、もっと頭をひねって、素人には訳のわからない理論を考えてもらおうじゃないか。

References:Life could exist in a 2D universe (according to physics, anyway) - MIT Technology Review/ written by hiroching / edited by parumo
「物理学者が「生命は2次元世界でも生存できる」ことを試算(米研究)」のページです。デイリーニュースオンラインは、ネットなどの最新ニュースを毎日配信しています。
LINE
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧