1万6000円台突破も「個人証券取引」がさっぱり盛り上がらないウラ事情

デイリーニュースオンライン

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 アベノミクス効果のあらわれか。2008年には7000円台割れも記録した日経平均株価も、今では1万6000円台まで回復(2014年9月時点)。今年度には「1万8000円超えも」(国内証券大手リテール)と強気の声も聞こえるほどだ。

 だが、今回の“アベノミクス景気”では、かつての好景気時と比べ国内証券各社の動きがやや鈍いとの声が金融関係者や個人投資家の間で上がっている。

時代性が反映される金融商品

 いくつかの国内証券各社リテール担当者の話を総合すると、好景気時には、それぞれ推奨する金融商品がある。その商品性がその時々の好景気を本質を表しているという。

 たとえば、2000年代半ばのITバブル期なら、当時、一世を風靡したホリエモンこと堀江貴文社長のライブドア株にみられる「ワンコイン(500円)」での売買が可能な低位株を主軸とした株取引ブームだ。この頃から20代、30代の若年層の間では、証券会社リテール担当者を通さず、インターネットを用いたITで直接取引が浸透した。

 その後、2000年代後半になると、株取引よりも、より強気な金融商品が好まれるようになった。低額の資金でも高額運用が可能な資金効率のよいFX(外国為替証拠金)取引や日経225miniなど個人向け先物がそれだ。FXでは、例えば1万円を証拠金(担保)として預け入れると、レバレッジを100倍に設定すると、100万円分の取引をすることも当時は可能だった。

 ところが、こうした好景気も長くは続かず、リーマン、サブプライムなどの海外発の金融危機で活況に冷や水が浴びせられた。今回、好景気到来といっても多くの個人が証券取引に二の足を踏むのはこの経験が大きい。

近年、なぜリテールに軸足が置かれないのか?

 こうした流れを受け、国内証券各社は、今回のアベノミクス景気では、「一般個人を対象としたリテールでは証券取引への推奨に軸足を置いていない」(前出・同)という。

 個人の証券取引における証券会社の収入は取引手数料だ。証券会社サイドからみれば、個人が証券取引を繰り返さなければ収入には繋がらない。いわゆる“回転売買”だ。

 かつては個人が取引を頻繁に行なわせるべく、証券会社リテールは、顧客に様々な銘柄を推奨したが、この推奨方法も社会的な非難を浴びた経験もある。ゆえに近年では「ほとんど行なわれていない」(同)現状がある。

国内証券各社は得意分野ごとにすみ分け

 そのため国内証券各社では、今回の好景気を受けて、シニア層を主なターゲットとする富裕層対象のプライベートバンキングに注力、ラップ口座やNISA口座の拡大に躍起だ。若年層個人への取引推奨は「ネット証券任せ」(国内証券大手リテール)とその内実を明かす。

 他方、若年層を主な顧客層としていたネット証券では、SBI証券や楽天証券にみられるように実際に顧客と相対する対面営業に乗り出すところと、カブドットコム証券や松井証券のように、従来からの強みであるネット取引に専念するところにわかれる。

「強みである自社システムをさらに磨く。これにより多様化する顧客ニーズに応えることが大事」(カブドットコム証券)

 好景気にもかかわらず盛り上がりに欠けるといわれる個人の証券取引。これに向き合う国内証券各社も、今回の好景気では「慌てず、騒がず、粛々と」(国内大手証券広報)対応しているようだ。

(取材・文/秋山謙一郎 Photo by Dick Thomas Johnson via Flickr)

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