「進撃の巨人」未公開の中国でなぜかバカ売れの謎

デイリーニュースオンライン

 前回は中国でiPhoneが大人気だと書きましたが、都市部の平均月収が6万円程度の中国人にとって、その月収と同額のiPhoneは非常に高価なものです。なのになぜ、バカ売れしているのでしょうか? それはもちろん、Apple製品が魅力的ということもありますが、それだけではありません。

 2013年、kantarという米国の調査会社が、世界各国のスマホとガラケーのシェア比率を発表しました。それによると、日本のスマホ率が28%だったのに対し、中国の都市部はなんと42%もあったのです。ちなみに、中国ではiPhoneだけではなくて、iPadも大ヒット商品。年収は日本人の5分の1程度だというのに、なぜ、こんなにも多くの国民が高級デジタル製品に手を出しているのでしょうか。

 その理由は、僕が思うに、中国で使用するiPhoneは、日本で使用するよりも数十倍も楽しむことができるからだと思います。

 例えば、中国人はまず、iPhoneやiPadなどのアップル製品を購入すると、アップルの非公認アプリをインストールできるように、インストール制限プログラムを破壊するハッカーソフトを入れます。そのハッカー行為を「脱獄」と呼びます。脱獄すると、ネットに違法アップロードされている海賊版のマンガや映画、そして日本産AVもダウンロードし放題になるのです!

誰もエンターテイメントに金を出さない

 中国の違法アップロードの現状は、おそらく日本人の想像以上でしょう。例えば、『週刊少年ジャンプ』は、日本での発売日(月曜日)にはネット上に翻訳された上でアップされます。翻訳するのは大変な作業ですが、この手のサイトは広告収入で稼いでいるので、その作業に見合った収入は余りあるほど入ってくるのです。

 それ以外にも、日本の主だった漫画は、ほぼすべて無料ダウンロード可能です。ジャンプ、マガジン、サンデーで連載されている作品の単行本なら必ずどこかにあります。もちろん漫画のみならず、ハリウッド映画や韓流ドラマ、日本ドラマに至るまで、ありとあらゆる映像もアップされているのです。

 つまり、中国ではiPhoneやiPad、それにパソコンを買ったら、無尽蔵にエンターテイメントを楽しむことができて、いくらでも暇つぶしができるのです。それが高い機器であっても購入する理由です。

 ちなみに、漫画でいいますと、昨年から中国で話題となっているのが『進撃の巨人』です。でも、実はこの漫画(アニメ)、残酷描写が多いため、中国では出版の許可が下りず、正式な販売ルートでは販売していません。みんな、違法にアップロードされているアニメや漫画を見ているのです。

 販売されていないのに大ヒット! そんなコンテンツが山ほどあるのが、中国なのです!

 僕のような中国人漫画家にとって、好きな日本漫画が読めるのは嬉しい反面、面白くない話です。だって、なんで質の高い日本の漫画がタダで読めるのに、わざわざそれよりもレベルの低い中国人の描いた漫画を金を出して買うのでしょう? 中国の漫画家の大半が食うにも困る生活を送っているのは、ひとえにこの違法アップロードにあると言っても過言ではありません!

 集英社さんも講談社さんも小学館さんも、この著作権無視のクズ国家に対してもっと怒りの声をあげてください!

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/杉沢樹)

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