ノーベル物理学賞・中村修二が日本の科学界から総スカン状態

デイリーニュースオンライン

「右手をズボンのポケットにつっこみ、両足をハの字に広げて踵で地面を蹴るように裁判所に入ってく姿はどこかのチンピラみたいだったよ」

 2004年1月、特許関連訴訟の取材で中村修二氏に張り付いていた週刊誌カメラマンの言葉である。

 ご存知の通り、中村修二といえば青色発光ダイオード(LED)の研究が評価されノーベル物理学賞を受賞した人物である。

「今回のノーベル賞のおかげでLEDの発明には中村氏だけでなく、その前にもっと重要な人物が2人いることを世間に広く知ってもらうことができてホッとしていますよ」
 こちらはある科学ジャーナリストの言葉だ。

日亜化学の恩を仇で返し、今では業界の嫌われ者に

 10月7日、中村修二カリフォルニア大学教授、赤崎勇名城大終身教授、天野浩名古屋大教の3者によるノーベル物理学賞同時受賞で日本中がわいた。お祭りムードを盛り上げる記事を書こうと取材を始めたが、中村氏についてはいい話が出てこない。

「特許関連の訴訟で古巣の日亜化学(徳島県)と長い間ケンカを続けたおかげでLEDといえば中村修二、みたいなイメージがあるけど彼は既存の研究成果を応用して製品化しただけであって、大本の発明は赤崎、天野の両教授の功績です」(前出科学ジャーナリスト)

 中村氏は1954年愛媛県生まれ。徳島大学工学部を卒業後「日亜化学工業」に入社した。在籍中の88年から青色LEDの研究に乗り出し、製品化に必要な高品質の窒素ガリウムの結晶を作る『ツーフロー式』という方法を考案した。中村氏のノーベル賞授賞はこの功績に由来する。現在、中村氏はアメリカ国籍を取得し、カリフォルニア大学を拠点に米国民として研究活動を続けている。

「中村氏は当初、自分の発明のおかげで日亜化学は大儲けをしたのだから800億円払えって言ってましたが、それはあまりにも現実離れしています。結局裁判では200億円の支払い命令が出ましたが、8億円程度で和解となっています。しかし日亜化学は中村氏が会社を辞めたあとも地道な研究を続け、青色LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDというものを発明しています。中村氏が開発したツーフロー式はそもそも使っていません」(前出科学ジャーナリスト)

 中村氏はノーベル賞授賞の記者会見で日亜化学工業とのいざこざに対する自分の感情を言葉にし「原動力は怒りだ」と発言しているが、日亜化学の関係者には「あれはあまりにも身勝手な考え方。到底許容できるものではない」とする者も少なくないという。

「そもそも中村氏は日亜化学に在籍中、アメリカのフロリダ大学に1年間社費で留学させてもらっています。当時のフロリダ大学には世界中から名だたる秀才が集まっていました。当時、中村氏はどの研究室でも相手にされませんでした。著書の中では『私は博士号を持っていないから研究者として見てもらえなかった』みたいなことを書いていますが、あちらは実力があればそういう差別はしません」

「そういった風土が好きだから今や国籍までアメリカに移しているんでしょうからね。つまり当時は箸にも棒にもかからなかったということです。そんな発展途上の研究者を日亜化学は大切に育てたんです。そういったことはいっさい恩に感じない人なんです。こういう人間性が嫌われて日本の研究機関からは総スカンの状態です。同時受賞の赤崎教授もかなり嫌っているようですよ(笑)」(前出科学ジャーナリスト)

 聞けば聞くほど問題の多い人物だが「憎まれっ子世にはばかる」の言葉もある通り、こういう人物だからこそ「俺が俺が」と目立つ行動に出て世に名を残しがちだ。なんとも後味の悪いノーベル賞受賞である。

(取材・文/江波旬)

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