【パクツイ】バイラルメディアだけじゃない!ツイッターで深刻化する著作権問題

デイリーニュースオンライン

 悪質バイラルメディアの記事盗用に対し、ライターのヨッピーさんが追い詰めていき、和解金支払いまで到達したことが今話題となっている。

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 だが、著作権を軽視し、人の尻馬に乗って稼ごうとする商売は悪質バイラルメディアだけではない。ツイッター上における「パクツイ問題」もまた深刻である。ニュースサイトのねとらぼがパクツイに対して使用許可を求め、許可を受けて掲載してしまうという事件があったことも記憶に新しいと思う。

【どうしてこうなった】パクツイを勝手に転載許可してねとらぼがとばっちり。 - Togetterまとめ

 解説すると、まずパクツイというのは、ツイッター上で人気の他人のツイートを「パクってツイート」する行為。これの何が問題かというと、例えばあなたの呟きが大ヒットして2000RTされたとする。しかし、その途中で、パクり者がその呟きと全く同じ文面を呟いて、そちらがRTされると、本来あなたに帰するはずの栄誉や賞賛の何割かがパクった人のほうに流れてしまう。

 むしろパクった人のほうが人気が出たり、あなたが「パクったのではないか?」と疑われることさえある。PR目的などビジネス的な意味でツイッターを利用している人には経済的な損害も生まれ軽視できない問題といえる。

 現に、鴻池剛さんはパクツイ問題に困り果て、以下のようなツイートを行った。

 パクツイをBotで行っている業者は、他人の人気ツイートでフォロワーを増やし、時折、広告を混ぜ込んで収益に繋げているようである。ツイッター社に訴えて、それらBotを削除してもらってもBotは次から次へと生まれ続けてキリがない。

 しかし、著作権違反は立派な犯罪である。著作権は親告罪なので、パクられた本人が警察に訴えれば事件になるはずだが、実際に訴えたらどうなるのだろうか? 幾つもの人気ツイートをパクツイされ、実際に警察に行ってみたイラストレーターのナカシマ723さんに、その時の流れを聞いてみた。

「まず地元警察に電話口で相談したんですが、担当の方がそもそもツイッターを知らなくて、そこからのスタートでした。諸資料をプリントアウトして警察署へ行き、ツイッターとは何か、から説明しました。そこでまず言われたのは『この場では、これが違法行為かどうか判断できない』ということです。万引きなどと違い著作権違反は複雑なのだそうです。例えばツイッターでは規約として転載活動が認められているかもしれず、だとすると確かに犯罪にはならないですよね? その辺の確認も必要であり即座の判断はできない、と。これから相談に行く人はツイッターの規約もプリントアウトして行くのをオススメします」

 実際に公式RTはツイッター規約でも認められている。それと文面(イラスト)を丸パクリしての転載との違いは、ツイッターを利用しない人にとっては分かりにくく説明を要するところであろう。

 また、パクツイされることに対して、「されたとして、何の害があるのか?」という点も警察から説明を求められたという。ナカシマさんの場合は、ネタイラストを投下してフォロワーを集め、LINEスタンプの収益に繋げるというスタイルだったため、機会損失であることを伝えた。しかし、仮に経済的問題がなかったとしても、自分の作品が不正な利用をされていたら抗議して然るべきであろう。何より作り手側のモチベーションにかかわる問題でもある。後述する「乗っ取り」に使われるなどであれば尚更である。

「とりあえず規約を読んで違法性を確認するとのことで、一度目のヒアリングは終了しました。しかし、立件まで行けるかは難しい、ということも告げられました。それで、今度は私のイラストが『乗っ取り』に使われたこともあって、再び警察署に行ったのですが、やはり立件は難しいのではないか、と言われ、結局、告訴状は作れなかったのです」

 これが実際の「アプリ認証を利用した乗っ取り」に使われた様子である。

 イラストはナカシマさんのもの。イラストを勝手に転載した上でURLを記述している。このURL先に飛ぶと「連携アプリを認証」を求められ、許可すると、あなたのアカウントが勝手にツイートやリツイートを行うようになってしまう。

 このようにパクツイをされることで、知らないうちにあなたの作品が迷惑行為の片棒を担ぐことになりかねないのだ。なお、仮に間違えて認証してしまっても、ツイッターの「設定」→「アプリ連携」から解除可能である。詳しくはこちらを参照されたし。

Twitterのアプリ連携を解除する方法。勝手にDM・ツイート時は要注意! - たのしいiPhoneAppBank

 また、なぜ立件が難しいのか、という点については、ナカシマさんから興味深い説明を受けたが、悪用の恐れがあるためこの場では伏せざるをえない。現状の司法システムがサイバー環境に追い付いていないことを痛感する内容であった。

「立件が難しく成果が出しづらいために警察もやや及び腰になっているのかもしれません。今は弁護士に相談しており、この後も色々と煩雑な過程を踏むことになりますが、情報を集め次第、訴訟に向けて動いて行こうと思ってます」

 万引きなど実態のある被害とは異なるため被害が認識されにくく、警察に行っても簡単に事は運ばない現状だが、パクツイで実際に困っている人がいるのは事実。今後のツイッター環境改善のためにも良い結果が出ることを期待したいところである。

 なお、ナカシマさんは自サイトにて、パクツイに関する一連の流れをマンガ形式でレポートしている。

パクツイBOTスレイヤー | Twitter上にはびこる、無法の無断転載BOTとの戦いの記録!

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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