幸福の科学大学「不認可」地元で課税問題が再燃か

デイリーニュースオンライン

ただの空き地に「読経処」という看板が(2012年撮影)
ただの空き地に「読経処」という看板が(2012年撮影)

 10月31日に下村博文文科相から「不認可」とされた幸福の科学大学。文科相職員を脅すなどした「不適切な行為」が理由で、最長5年間は認可しないペナルティが課せられたが、これによって開設予定だった千葉県長生村では、数年前の課税問題が再浮上しかねない雲行きになっている。

 これまでの経緯はこうだ。

 幸福の科学大学予定地は、リゾート開発目的で土地を購入した不動産業者が2008年、宗教法人・幸福の科学に売却したものだ。総面積31ヘクタール、売却価格は57億円だった。この直後に、村がこの土地に固定資産税を課すべきとの議論が村議会に巻き起こる。

 宗教法人なら非課税だろうと思いきや、実は過去の判例(1990年・名古屋地裁)で、非課税とするために必要な要件として「宗教法人が専ら本来の用に供する土地であること」など3つの基準が示されている。

教団との癒着が噂された村長は選挙で落選

 長生村の31ヘクタールの土地は、大学予定地と称しつつ、実際には宗教法人の所有地として、事実上の空き地として放置されてきた。当時、議会関係者は筆者にこう語った。

「判例から考えて、宗教用地として利用していない土地については固定資産税を課すことができる。宗教法人の所有になったといっても、実際には宗教活動に利用されていないのだから課税すべきです」

 税額は、年間約2500万円。しかし当時の長生村村長は、議会の指摘をよそに、固定資産税の納付書を教団に送付せずにいた。教団側は当然、問題の土地を「境内地」だと主張して課税論に反発。空き地の草を刈るなどし、そこに「読経処」の看板を掲げたり、信者たちに空き地散策を案内する看板を設置するなどした。

「週末などに信者を集めて、さもそこを宗教用地に使っているかのようなことをし始めました。教団は空き地を境内地(宗教用地)だと主張しているので、まるでそのアリバイ作りのように見えた」(村の関係者)

 やがて村議会では、村長と教団の癒着疑惑が取り沙汰される。2011年、村長が栃木県にある幸福の科学学園を視察した際に、移動費と食費を教団側が負担したのは寄附行為に当たるのではないかという疑いだ。議会は2012年に「百条委員会」まで作って調査を行い、村長を糾弾した。

 調査の過程で、当時の村長は食費の領収書を提出するなどして反論したが、結局、同年の村長選挙で落選。当時、村議会議員として村長を追求し、幸福の科学への課税を公約に掲げた小高陽一氏が新村長となった。

 ところが2013年、小高村長は、教団が2009~2012年分の固定資産税額に相当する1億円を村に寄付することと、大学予定地の2013年から大学が開設される2015年分までの固定資産税課税を受け入れることを条件に、過去の固定資産税を課税しないという方針を打ち出した。

「そこに、教団側からこの条件を示され、“今日中に決断しなければこの条件はなしだ”と言われた。教団との話し合いが難航することはわかっていたし、裁判になった場合のコストを考えれば、悪い条件ではない」(小高村長)

 教団は、31ヘクタールの土地のうち約17ヘクタールを学校法人幸福の科学学園へと名義変更。2013~2015年分の固定資産税支払いに合意したのは、この17ヘクタールだ。税額は年間約1300万円。学校法人が直接教育に用いる不動産も、宗教用地同様に固定資産税の対象外のため、大学開設後の2016年からは再び「非課税」になる──。

現村長「課税すべきとなれば今後、課税していく」

 そういう予定だった。しかし、周知の通り、幸福の科学大学の「不認可」に。教団側が文科省職員を脅すなどしたことで、最長5年間認可されないというペナルティまで課された。ペナルティの期間は未定で、最短で1年間となる可能性もないではない。それでも今年と来年の最低2年間は、大学開設は絶望的だ。

 下村文科相の決定後、小高村長は記者の取材に対して、こう語った。

「大学ができなくなった以上、再び固定資産税の対象になる可能性が出てきます。大学にする予定だった校舎などの建物は、外側がほぼでき上がった状態。これを誰が何に使うのか。それに応じて、課税すべきとなれば課税します」

 長生村では、2013年に議会が大学開設に反対する住民請願を採択し、文科省に対して大学認可の「慎重な検討」を申し入れた行ったほか、住民も553人の署名を添えて文科省に大学の設置反対を請願している。一方、幸福の科学大学に物品を納入する予定の地元業者21社が「長生地域商工振興協同組合」を結成。同組合や商工会会長などが、教団側の「幸福の科学大学 待望論」なる記事に寄稿までしている。

「大学が不認可になって、ほっとしている住民もいれば、残念がっている人もいる。私としては、どちらか一方の立場に立つことはありません。もし大学開設を止めることができないのであれば、いかにいい形でやってもらうかを考えるのが村長の仕事。大学ができないなら、それに応じて必要な対応を考えていく」(小高村長)

 地元の「幸福の科学騒動」は、今後も新たな展開がありそうだ。

(取材・文・写真/藤倉善郎)

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