広島カープ（以下、カープ）の不動のエースとしてだけではなく、WBCなどの国際試合においても主戦級の活躍。日本のエースとして確固たる地位を築いた前田健太（通称、マエケン）。11月10 日から開催される日米野球での活躍に期待を込めて、彼のこれまでの功績をここに掲載したい。

　前田健太は、大阪府出身で現在プロ7年目の26歳。今シーズンの推定年俸は2億8000万円。PL学園在籍時の2006年に、高校生ドラフトでカープから1巡目指名を受けて入団。まずは、これまでの成績を明記しておこう。

　これらの数字が示すとおり、プロ野球界のエースに君臨しているのは一目瞭然。そのなかでも最多勝、防御率、奪三振でリーグ1位を記録し、投手最高栄誉のタイトル沢村賞を獲得した2010年は、エース・前田健太が確立された年と言っても過言ではない。

　さらに、2012年4月6日対横浜戦では、1999年の佐々岡真司以来チーム13年ぶりのノーヒットノーランを達成。絶対的エースの座を不動にするにはあまり得る記録であった。ちなみに、カープの暗黒時代の幕開けとされている1998年以降、カープで2桁勝利を記録した日本人投手はわずか8人……。年度毎の日本人2桁投手の内訳は以下のとおりである。

1999年　佐々岡真司15勝
2000年　佐々岡真司10勝
2001年　黒田博樹12勝　高橋建10勝
2002年　長谷川昌幸13勝　黒田博樹10勝
2003年　黒田博樹13勝
2005年　黒田博樹15勝　大竹寛10勝
2006年　黒田博樹13勝
2007年　黒田博樹12勝
2009年　大竹寛10勝
2010年　前田健太15勝
2011年　前田健太10勝
2012年　前田健太14勝
2013年　前田健太15勝　野村祐輔12勝　大竹寛10勝
2014年　前田健太11勝　大瀬良大地10勝

　この数字を見れば、2010年以降の前田健太の成績がいかにずば抜けているかがお分かりいただけるだろう。そして、在籍年数の違いや2009年に完成した新球場、2012年から導入された統一球など、比較の対象条件に差があるため一概には語れないが、現メジャーリーガーで元カープのエース・黒田博樹投手と比べても、その成績は上をいっているように思えてならない。

　特筆すべきはやはり、沢村賞の獲得だ。沢村賞は12球団で例外を除いて一人しか選ばれないタイトル。いまや名門ヤンキースのエースとして君臨する黒田ですら獲得したことがないタイトルを、すでに獲得しているのだ。

興行面でも欠かせぬ存在

　ここまで、前田健太のプレーヤーとしての功績を紹介したが、前田健太の功績はその投手成績によるものだけでない。

　以下は、MAZDAスタジアム初年度からの１試合平均観客動員数と前田健太投板時の平均観客動員数の対比である。

2009年　26015人／26903人
2010年　22224人／20661人
2011年　21980人／28509人
2012年　22079人／24680人
2013年　21744人／23474人
2014年　26455人／30518人

　これを見て分かるように、前田健太投板時の動員数は2010年以外は平均観客動員数を大きく上回っている。しかも、前田健太投板試合は雨が多いことは非常に有名な話。2014シーズンに関しては、投板27試合中、じつに13試合も雨。屋外スタジアムゆえ、雨は客足に大きな影響を及ぼすことを考えても、まさにエースの働きと呼ぶにふさわしいだろう。

　さらに、前田健太はグッズ売上に関しても貢献度が高い。チームの看板選手ということで、選手名がつく商品そのほとんどに名を連ねている。ファンの中では周知の事実だが、カープ球団はメモリアルな場面が起きる度に、何かと限定商品を販売する歴史がある。サヨナラ勝ちの度に限定発売するサヨナラTシャツなどはその最たる例だ。前田健太はカープ選手の中でもダントツでメモリアルな場面を作ってきている。ノーヒットノーランを始め、マツダスタジアム記念すべき１勝目も前田健太の完封試合であった。そして、そうした限定商品は、そのどれもが即座に完売するのだから、個人での貢献度もかなり高いのだ。

　このように、入団から8年が経過したいま、前田健太投手は成績面はもちろんのこと、興行面においてもチームになくてはならない存在となっている。

　近い将来メジャーリーグへの挑戦が確実視されているが、カープに優勝をもたらすことができる男は、前田健太をおいてほかにはいない。来年度残留し、カープ24年ぶりの優勝を勝ち取ってくれることをファンは信じて止まない。そして、優勝を置き土産に、胸を張って海を渡り、メジャーリーガー相手に躍動する前田健太の姿を誇らしく眺める。それがカープファンの夢でもあるのだ。

（取材・文／井上智博）