消費増税論議に大阪・西成住民が参戦「焼酎1杯が200円になってもうたがな」
政府は4月の消費増税以降の消費低迷を受け、2015年10月に予定されている消費税率再引き上げの先延ばしの検討に入ったと複数のメディアは報じた。再引き上げを延期し、衆議院を解散するのではないかという見方も現実味を帯びてきた。
消費税増税は、税負担が増えるほど低所得者への負担が大きくなる。とりわけ食料品や衣料品といった日用品への負担が消費者に重く圧し掛かる。こうした状況を大阪・西成の「あいりん地区」の住民たちはどうみているのだろうか。さっそく現地に趣き、話を聞いてみた。
消費税増税を気にしない生活保護受給者
「消費税? 影響ないんちゃうか? ほんなもん10円、20円の世界やろ。わしらにあんまりカネに執着ないから気にしてへんで」
こう語るのは大貫雅之さん(仮名・47歳)だ。暇な時、大阪・西成の三角公園で行なわれる炊き出しにやって来るのが、今の楽しみのひとつだという。高校卒業後、自衛隊入隊。退職後は、九州から大阪に出て来た。以来、飲み屋でバーテン、風俗店の黒服などで生計を立ててきたが、体調を崩し、現在は生活保護受給中だ。
「保護受けてる連中は、ほんま、カネへの執着あんまりないんよ。ただ働かれへんだけやから。消費税がどうのという話は聞くけど、強いて言えば、缶ジュースやタバコが値上げされるんかな……ゆう程度。あんまり実感はないな」(大貫さん)
大貫さんによると消費税増税を気にするのは、生活保護受給者ではなく日雇い労働者ではないかと話す。
1杯180円の焼酎が200円になってもうたがな!
早速、日雇い労働者が集まる、大阪・西成区は萩之茶屋にある「あいりん労働公共職業安定所」に向かった。
「そら生活に大打撃や! 西成ではな。焼酎1杯300円で出す店は高級店や。250円くらいが相場やな。今年の消費税増税前なら180円で出してるところもあったくらいや。それが増税後は200円に値上げや。来年、また値上げされたら死活問題やで」
もう西成のドヤで15年近く住んでいるという山田広幸さん(仮名・52歳)は、来年、第2段階の消費税増税により、酒、タバコが値上げされることをもっとも危惧している。
「わしは、この西成の住民のなかでは金銭感覚もしっかりしとるほうやから、5円単位の値上げでもうるさいねん。この4月まではタバコも1本10円から15円で売っとったけど、増税後は15円から20円が相場や。また値上げとなるとタバコ1本20円から25円になるやろ。おかしいで」(山田さん)
青空マージャンの掛け金は増えた気がする
だが、西成の住民で消費税増税を歓迎する向きもある。空き缶や雑誌を集めて生計を立てている井坂義弘さん(仮名・55歳)だ。
「増税後、アルミ缶1kgあたり50円の買取価格が増税後55円になった。雑誌も5円か10円上がったな。でも、出て行くカネも増えるからトータルではトントンなのかもしれん」(井坂さん)
井坂さんは、空き缶収集などで得た収入を少しでも増やすべく、大阪市内の児童公園で行なわれているマージャンに参加している。500円の元手を1日で1万円に増やせるほどのスゴ腕だ。
「公園でやってる青空マージャンは、消費税もへったくれもないよ。消費税が上がった4月以降、掛け金も増えた気がする。一般人も国も財政が厳しい時代だから文句は言われへんね」(井坂さん)
今回の取材で、大阪・西成地区では、意外にも消費税増税の影響を受けていない実態が浮き彫りとなった。来年2015年に予定されている消費税増税の再引き上げは果たして実行されるのか。
(取材・文/秋山謙一郎)