再生可能エネルギーの主役は“太陽光→地熱”の時代が到来

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東北電力 柳津西山地熱発電所
東北電力 柳津西山地熱発電所

 現在、地熱・水力発電がにわかに注目を集めている。というのも、九州電力をはじめとした電力5社が商業目的の太陽光発電設備の新規契約を一時停止。申し込みが殺到したためとのことだが、全国的な送電網整備の遅れが本当の理由だと言われている。だが、重要なのはそこではない。

天候に左右される太陽光より安定の地熱

 注目したいのは、政府が再生可能エネルギーの政策の大幅な転換を打ち出していること。これまで、再生エネルギーでは太陽光発電が価格面で優遇されるなど政策の後押しを受けて拡大してきた。しかし、太陽光発電は電力供給量が天候に大きく左右されるという問題がある。そのため、今後は安定供給が期待できる地熱や水力発電の普及を促進していくというわけだ。

 日本は世界でも有数の火山大国である。地熱の埋蔵量は世界第3位で、原発に換算すると20基以上に相当する2300万kwと言われている。人気株式評論家の山本伸氏も「地熱が断トツで再生エネルギーの本命」と指摘している。

 しかし、地熱発電に有望な場所の多くが規制によって発電所の建設が禁止されている国立公園内にあるなど、その普及が妨げられてきた。また、大規模な地熱発電所の建設には膨大なコストがかかるため、従来の買い取り価格では採算に合わず、商用化が進まないという問題もあった。ここ数年、一部の規制が緩和されるなど普及に向けた道筋が少しは示されつつあるものの、それらはいまだ不十分であり、結果としてほとんど地熱の普及は進んでいない。

 ところが、今回の太陽光問題がきっかけとなり、政府が地熱や水力の普及に本腰を入れる可能性がかなり高まってきたと言える。大胆な規制緩和や買い取り価格の引き上げが行われれば、地熱が再生エネルギーの主役に躍り出る公算はかなり大きい。

 ポイントは、まだ地熱関連銘柄の主力となりうる銘柄が少ないこと。経産省の政策転換発表を受け、地熱開発に不可欠なボーリングを手掛ける鉱研工業や、地熱発電所向けポンプの拡大が見込める横田製作所の株価が一時急騰したが、いずれも時価総額100億円に満たない小型株だ。その分、新たな材料が浮上した場合、買いが集中する傾向がある。

 ほかにも、富士電機や三菱重工なども地熱発電関連の有望銘柄として挙げられるが、こうした大型株は少々の材料では株価に反映しづらいのが難点。やはり、まずは小型株から動き始め、実際に地熱発電が収益につながることが見込めるようになった段階で大型株にも買いの手が回るという順序になりそうだ。

資源に乏しい日本では再生エネルギーの開発が急務

 現在開かれている国会では、消費増税や早期解散総選挙に話題が集中している。さらに、目先は円安関連や追加緩和に絡んだ銘柄に物色の矛先が向くと思われるため、年内に地熱や水力発電普及の具体策が出てくるとは考えづらい。ただ、消費増税に向けて政府が検討中とされる経済対策の中に、地熱普及に向けた政策が入ってくる可能性はある。少なくとも、来年春の通常国会までには具体策がまとめられるはずだ。

 いずれにしても、具体策が出たり、大手企業が新たに地熱事業に参入するなどの材料が浮上すれば、再び関連株が人気化するのはほぼ間違いないだろう。そうした急騰相場に短期で飛び乗るのもアリだが、株価急落あるいは調整後に揉んでいる時に仕込んでおけば、近いうちに報われる局面が訪れそうだ。

 地熱発電所を新設するには調査などを含めると5年、10年単位の時間が必要な模様だが、資源に乏しい日本では再生エネルギーの開発が急務であることは確かなのである。

新井奈央(あらいなお)
マネーライター。株式評論家・山本伸のアシスタントを務め、株や経済を勉強。その後フリーライターとして活動し、株や為替などを中心に投資全般の執筆を手掛ける。マネー専門のライターとして雑誌や書籍などの執筆で活躍中。そのかたわら、銘柄の紹介にも携わり、夕刊フジの月間株レース「株−1グランプリ」では、出場3度のうち2度、月間チャンピオンの座についている。

(Photo by isshuan via flicker)

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