どこまで暴いていいのかわからない「ネトウヨ」の実情|やまもといちろうコラム

デイリーニュースオンライン

ネトウヨの真実とは……
ネトウヨの真実とは……

 やまもといちろうです。ごく最近まで「ネトウヨの親玉」呼ばわりされてまことに心外でしたが、私は単なる保守主義者のグローバリストです。

 簡単に保守主義とは何かを説明すると、「維持するために改革せよ」という精神であります。これだけ。何を維持するのかと言うと、社会にとって必要とされるもの。この必要とされるものがブレると大変なことになります。例えば、日本人の誇りや伝統や名声を維持しようとしたとき、戦後出てきたものが「日本の伝統だ」となると途端にダメな主張になってしまうのが保守主義です。

 あるいは、日本「民族」として、って話になると、保守主義を通り越して民族主義に化けてしまいます。日本人のための日本国だ、日本社会だという思想はこれはこれで貴重なんですが、そこで日本に来ている外国人を日本人が「出て行け」とやると、守るはずだった日本人の海外での名声は堕ちることになってしまいますし、もともと日本は移民を多く受け入れてできてきた国ですんで、もっと日本人らしい包容力はあっていいと思うんですよね。

 憲法上、外国人に対する生活保護が認められていないのに支払っているらしいとか、細やかな問題はあるんですけれども、うっかりした排斥にまで行ってしまうと、保守主義者の観点からしても「やりすぎなんじゃね」という話になるわけです。

報道の凄味と見るか、ゲスい暴露趣味と感じるか

 そんな保守論壇らしきものに、このたび問題が一件持ち上がりました。ネットではそれなりに名前が知られていたネトウヨ「ヨーゲン」さんに対して、ジャーナリストでライターの安田浩一さんがその生い立ち以降の人生について克明に追ったルポが非常に興味深く、またやりすぎではないかという批判も出ている件です。

ネットでヘイトスピーチを垂れ流し続ける中年ネトウヨ「ヨーゲン」(57歳)の哀しすぎる正体【前編】

ネットでヘイトスピーチを垂れ流し続ける中年ネトウヨ「ヨーゲン」(57歳)の哀しすぎる正体【後編】

 ヨーゲンさんについてのことは、本稿では多くは触れません。安田さんの記事をお読み戴ければと思います。

 で、念のため申し上げておきますと、私と安田さんは、畏友の中川淳一郎さんと共に昨年、ネット右翼関連本を共著で上梓させていただいております。その意味では、私は安田さん側の人間であります。

 一方で、いかにヨーゲンさんがアレであり、彼への制裁は必要だと言う立場を取っていようとも、ここまで私生活を暴き、世に晒すことは過剰な正義なんじゃないのという主張があります。

安田浩一氏の「ヨーゲン」記事に見る正義の暴走について

 この記事では「確かにヨーゲン氏は下劣かつ幼稚な差別主義者」で「ヘイトスピーチは何らかの方法で規制されるべきものだ」とする一方で、そのようなヨーゲンさんに対して彼の「学歴、ご近所の評判、同級生からの評判、商売の失敗、借金歴、逮捕歴、自宅の外観、家族構成、風貌…etcetc」を暴くことは「この記事からは“ヨーゲンは惨めな人間だった”ということ以外、何の事実も得られない」としています。

 ヘイトスピーチを繰り返し、異常な人間として安田さんの記事に描かれるヨーゲンさんに、安田さんがやったことは過剰な正義なのでしょうか。

 これはある種の週刊誌技法であって、それを報道の凄味と見るか、単なるゲスい暴露趣味と感じるかは、分かれると思うんですよ。どれだけこの問題を切実と思っているか、経験の中でこの手の失うものの無い人物が懲りずにネットでやることの問題がどれだけ酷いかといったところで感じ取るものは違うのではないかなあと。

 言い方は悪いですけど「気狂いがやらかしたものなのだから、彼に対して何を書いてもいいのだ」というのでは何も救いにならない一方、そういう気狂いと同類のことをしでかすネトウヨがもう少し行儀良くならないものかという問題意識はどうしても持ってしまうんですよね。

 願わくば、本件が一罰百戒的な巌となって、もう少し自制的で他者から受け入れられやすい主張にネトウヨがシフトして、きちんとした公論となることを期待したいと思っております。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

(Photo by shixian2011 via flicker)

「どこまで暴いていいのかわからない「ネトウヨ」の実情|やまもといちろうコラム」のページです。デイリーニュースオンラインは、ネトウヨヘイトスピーチネット連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧