【犯罪ビジネス】貧困者を使ってトバシ携帯を量産させる「ダミー闇金」とは?

デイリーニュースオンライン

3万~5万円の小口融資はあくまでも名義人役者をつくるための布石
3万~5万円の小口融資はあくまでも名義人役者をつくるための布石

 振り込め詐欺から闇金、ドラッグ売買に違法風俗と、あらゆる裏稼業のシーンで重要なツールとして使われているトバシ携帯(第三者が契約→売却することで使用者の身元究明ができない携帯電話)。当然、そこには名義人役者(トバシ携帯などの名義人となる者)が必要になるわけだが、昨今その違法携帯契約現場に大きな変化が訪れているという。

「ちょっと前までは道具屋(裏稼業系ツールの専門業者)に頼り切りでしたよね。それこそ10年前なら携帯電話ショップの店頭でも契約者の身分確認が徹底していなかったから、粗悪な偽造免許証などでも契約できた。ところが今は身分証明がしっかり確認しますから、道具屋の商品も品薄傾向だったんです。そこで最近出てきたのが、ダミー闇金なんですよ」

 そう語るのは、トバシ携帯を大量使用する詐欺組織周辺者のHだ。もともと、トバシ携帯の名義人役者になる人間には、以下のようなものがいた。

  • 金銭的に苦しい多重債務者
  • 判断力と知識のない若者層
  • 失職者や生活困窮者

 こうした者を探しに、道具屋絡みの人間がホームレスの集まる都市部の公園やネットカフェ、カプセルホテル、サウナなどに「役者スカウト」に行くことも多かった。だが、このダミー闇金は、こうした手間を一掃してくれるのだとHは言う。

トバシ回線のSIMカードは末端価格4万円

「簡単な話で、普通に短期小口の闇金を経営して、上限5万円ぐらいの融資活動をするんです。今のご時世『5万円すら返せない人間』というのが多く、闇金業者に相談してきた『5万円すら融資できない客』の情報が大量に蓄積していますよね。そうした人間に5万円を貸して、返済の代わりにトバシ携帯電話の契約をしてしまうんです」

 確保した名義人役者に対する報酬は、1回線契約につき約5000円。10回線契約すれば元本分は返したことになる。だが、昨今のトバシ回線はSIMカード1枚の末端価格で4万~5万円。つまり、末端売却額は10回線で50万円のだ。実に10倍返しだし、契約時に入手した端末も別途買い取りルートがある。

「実際、ダミー闇金をやっているヤツから仲介かませて回線使う現場に流れるので、間で抜かれるわけです。それでも利益が十分出ますけどね。これが犯罪に使われれば役者は警察に呼び出されるが、ダミー闇金業者との接点がそもそもトバシ回線なので、警察はそれ以上追えない。この手段でトバシが作られるようになってから、ようやく“業界”はトバシの安定供給の時代に入った感じなんです」

 とはいえ、可哀想なのは名義人役者として使い捨てにされる人たちだ。彼らは現状で使っている携帯電話の回線を含めて、しばらく携帯電話を契約できない「携帯ブラック」の状態になってしまう。こうなると「プリペイド携帯をレンタル」でも使わない限り通信インフラ難民となってしまうわけだが……。

「その先も、彼らを現金化する手段はありますからね」

 犯罪に利用される弱者たち。搾り取られるだけ搾り取られた彼らが負のスパイラルから抜け出すのはそう簡単ではない。

鈴木大介
「犯罪をする側の論理」をテーマに、裏社会・触法少年少女らの生きる現場を中心に取材活動をつづけるルポライター。著作に、福祉の届かない現代日 本の最底辺の少年少女や家庭像を描いた『家のない少女たち』(宝島社)『出会い系のシングルマザーたち』(朝日新聞出版)、『家のない少年たち』(大田出版)『最貧困女子』(幻冬舎)などがある
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