神社ブームの流れで増え続ける「御朱印ガール」|東條英利コラム

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年々増え続ける「御朱印ガール」たち
年々増え続ける「御朱印ガール」たち

 パワースポットという言葉が定着化し、神社に対する参拝者も増えつつある昨今、「御朱印ガール」と呼ばれる寺社仏閣で受けられる「御朱印」集めにハマる女性が増えてきている。

 すでに3年ほど前から毎年20%程度の増加傾向にあり、その後、伊勢の式年遷宮や出雲の縁結びなど神社が話題になることも少なくなかったことを考えれば、この流れはある程度予測できた話だ。

 私が運営している神社専門のポータルサイト「神社人」でも同様の動きが窺え、全国の御朱印を紹介するページのアクセス数は増え続け、今では10万アクセスにまで達しようとしている。なかには、こうした動機で神社へ参拝することに対して否定的な考えを持たれる方もいるかもしれないが、私個人としては、諸々の理由もあって、割りと好意的に受け止めている。

神社にとってはありがたい3つの理由

 1つは、「御朱印」を受けることでその神社の由緒、縁起に直接触れる機会が増すということ。原則、神社・神道には教義性の高い教えというものがない。このため、氏子や崇敬者、参拝者が神職と接する機会というのは案外少ないものだが、御朱印を受ける際に、直接、神職に話しかける機会が得られれば、場合によって、神社に対する理解を深めるいい機会になるとも言えるだろう。 しかも、多くの神社では、御朱印と同時に神社の縁起を記した案内書を頂くことも多いので、いずれにしても、その理解を深めるのにいい機会とも言える。

 2つには、やはり御朱印代として少額のお金を神社に収めることができるということ。やはり、普通に参拝を済ませるだけだとお賽銭箱に多少の小銭を投げ入れるだけで終わってしまう。しかし、多くの神社は財務的にも厳しいところが多いだけに、実はこういった機会は、神社側にとっても多少の支えになるのではないかと思っている。事実、一部の有名な神社を除けば、その財政面が困窮している神社も少なくない。主だった神社およそ8万社と伝えられる神社の数に対しても、宮司の数はおよそ1万人にしかいない。

 単純に見積もっても1人あたり8社は兼務しないと成り立たない計算だ。なかには、神社の祭祀行為だけでは食べてはいけず、別の仕事をやりながら仕えるという兼業神職も少なくない。そう考えれば、少しでもこうした機会が増えることは案外悪い話でもないのではないだろうか。ちなみに、その金額に関しては決して全国一律で決まっているわけではないので、その点は要注意だが、相場としては、だいたい300円前後となる。

 最後に3つ目の理由としては、やはり神社に行く目的・機会が増えるということ。あまり神社に行く習慣がない人たちにとって、その機会は年始の初詣だけという方も多いだろう。しかし、そこに一定の目的が加われば、神社を巡る楽しみも増すというもの。しかも、「御朱印」と一言で言っても、その種類は多種多様で、デザインの違いはもちろんのこと、中には特定の例祭時期のみ、異なるフレーズや朱印が用いられることがある。

 また、通常、神職がいなくても運良く受けられる場合があるなど、多少の希少性が求められる「御朱印」もたくさんあるのだ。まさに、一期一会を体現する記録として、この御朱印帳を活用いただければ、自分たちの住む世界もさらに広がるというもの。ちなみに、私の持つ「御朱印」の中には、御朱印ガールたちが決して手にすることのできない希少性の高いものがある。それが、未だ女人禁制が敷かれている福岡の宗像大社の構成社の一つ、沖津島に鎮座する沖津宮だ。

 この島は別名、「海の正倉院」とも言われ、太古から連綿と守られ続けた最後の秘境と言ってもいい。そこから出土した土器類はすべて国宝とされ、その数ざっと見積もっただけでも8万点というから破格である。ここはある意味、別格と言ってもいいのかもしれないが、全国を見れば、そんなさまざまな歴史に触れることができる。ちょっと、国内を巡るお供にこうした御朱印帳を使ってみるのも意外にいいかもしれない。にしても、山ガールや森ガールと積極的に行動する最近の女性に世の男性諸君も見習った方がいいかもしれない。無論、私も含めて。

著者プロフィール

toujyou

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、一般社団法人国際教養振興協会を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

公式サイト/東條英利 公式サイト

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