IPOラッシュの12月新興市場が好調の日本株をけん引か

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狙い目のIPO株を検証
狙い目のIPO株を検証

 相場の上昇が続く中、株式市場には空前のIPOラッシュが訪れている。

 IPOとは、株式の新規公開のこと。IPOの数は、経済や株式相場の状況によって大きく上下し、基本的に経済や相場が好調であれば、その数も増える傾向にある。

 IPO社数は、200社近くが新規上場を果たした2006年をピークに、ライブドアショックや米国のサブプライム問題による相場急落と同時に急減。2009年にはわずか19社にまで落ち込んだ。

 しかし、2011年頃から再び増加をはじめ、2013年には54社が上場。2014年は、11月までに49社が上場を果たしているが、12月には実に28社が上場を予定している。これは、2000年以降で3番目に多い水準だという。

 ここまでIPOが増えてきたのは、やはり株式相場の上昇によるところが大きい。IPOの最大の目的は投資家から資金を調達することであるため、相場が低迷していると、その会社が希望する調達金額に届かない可能性もある。その点で、相場好調の今こそIPOの絶好のチャンスということなのだろう。もちろん、景気回復によって起業の機運が高まっていることも背景にある。

 IPO株は、既存株主を除けば投資家の“手アカ”がついていないため、値動きが軽いことが最大の魅力だ。そのため、一度人気に火がつけば短期間でも株価暴騰が期待できる。同時に多くの企業が上場すると、その分、投資資金が分散されてしまうというデメリットはあるものの、新興市場が好調であれば、その分、値を飛ばすIPO株が続出する可能性がありそうだ。

「12月に入って、外国人投資家が日経225採用銘柄などの大型株を売って、小型株を買う動きが出てきました。今後、この動きに追随する形で個人マネーが新興市場に流れる可能性があります。業務内容によっては人気が集中するIPO株も出てくるのでは」(大手証券アナリスト)。

 個人投資家の関心は、やはりどんなIPO銘柄の株価が上がるのかに尽きるだろう。そこで、11月までのIPO全49社をチェックし、これまでの傾向を調べてみた。

 下の表は、「初値から高値をつけるまでの期間」を上昇率順に並べ、上位20社をピックアップしたものである。要は、「初値で買った場合に大きく稼げたのはどんな銘柄で、どれくらいの期間がかかった?」ということ。ちなみに、ここではあくまで上場後の上昇をとらえることを目的としているため、上場初日に高値を付けた銘柄は省いた。

 上昇トップとなったFFRI(3692)は情報セキュリティ会社。ベネッセの顧客流出事件などを背景とした企業の情報セキュリティ意識の高まりを背景に人気が集中した。2位のフィックスターズ(3687)はシステム開発を手掛けており、2014年9月期の業績は売上、利益とも前期比で7割前後の高い伸びを見せている。

 ランキング上位にはクラウドやビッグデータ、情報セキュリティなどのIT関連が多く見受けられるほか、ロボット関連や自動車、土壌汚染対策、SNSゲームなど業種や業態は様々。もっとも、やはり伸び盛りで成長期待の高い銘柄が大半を占めているようだ。

 次の表は、12月に新規上場する銘柄の一覧である。先ほどの検証をふまえると、注目度の高い銘柄としては、スマホやネット広告事業を展開するGMO TECH(6026)、クラウドソーシングのクラウドワークス(3900)、技術者派遣のテクノプロ・ホールディングス(6028)、MVNO(仮想移動体通信事業者)サービスのU-NEXT(9418)、医療情報サービスのメディカル・データ・ビジョン(3902)、電力小売り業のイーレックス(9517)などが挙げられる。

 IPO株の難点は、既に上場している銘柄に比べると、業績や成長性に関しての情報に乏しいこと。業務内容などを見て注目度の高い銘柄を買うのもアリだが、2014年は高値を付けるまでに数カ月かかっている銘柄がほとんどだ。そのため、上場後の「会社四季報」などを手に、じっくりと成長性を見極めてから買うのでも十分間に合うのではないか。

 ちなみに、今年上場した49社のうち、12社は上場初日に株価の天井をつけている。ざっくり、4分の1は上場初日に高値をつけているわけなので、自分の目論見が外れた場合はすぐに逃げ出せる準備をしておくことも大切だろう。

新井奈央(あらいなお)
マネーライター。株式評論家・山本伸のアシスタントを務め、株や経済を勉強。その後フリーライターとして活動し、株や為替などを中心に投資全般の執筆を手掛ける。マネー専門のライターとして雑誌や書籍などの執筆で活躍中。そのかたわら、銘柄の紹介にも携わり、夕刊フジの月間株レース「株−1グランプリ」では、出場3度のうち2度、月間チャンピオンの座についている。

(Photo by Jacob Ehnmark via flickr)

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