大市場インドが日本のウイスキーメーカーに商機をもたらす!

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日本のウイスキーメーカーに商機アリ!?
日本のウイスキーメーカーに商機アリ!?

 日本では空前のウイスキーブームが巻き起こっている。2008年の秋頃からビジネスパーソンの間で「ハイボール」が大人気となったが、現在はNHKの朝の連続テレビ小説『マッサン』(ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝氏をモデルにしたドラマ)のブームにのって、ニッカウヰスキーの「竹鶴」などの売り上げが好調だ。今年のお歳暮商戦では、ニッカウヰスキーの売り上げがなんと前年比3倍にもなっているという。

 実は、日本国内だけでなく海外でも日本のウイスキーが人気となっており、ウイスキーメーカー各社の輸出は大きく伸びている。

日本ブランドが「世界最高ウイスキー」に認定された

 海外での日本産ウイスキーの人気は、国際的なウイスキーコンクールで高い評価を受けたことの影響が大きい。たとえば、今年11月には、英国の有名なウイスキーガイドブック『ウイスキー・バイブル』(2015年版)が、サントリーの「山崎シェリーカスク2013」を世界最高のウイスキーに選出した。日本のウイスキーが最高賞に選ばれるのは初めてのことである。

 国際的な評価の高まりを背景に、今後も日本のウイスキーメーカーが(成熟したウイスキー文化を持つ)欧州地域を中心に、ウイスキーの販路を強化していく流れが続くとみられる。だが筆者は、近い将来、有力新興国グループBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の一角を占めるインドが日本のウイスキーメーカーに最大の商機をもたらすと考えている。

 というのも、インドでは各種のアルコール飲料の中でもウイスキーがダントツの人気を誇るからだ。そこで以下では、インドのウイスキー事情について紹介しておこう。

 インドでは、ここ数年、ビールやワイン、ウイスキーといったアルコール飲料の消費が増加傾向にある。アルコール飲料の消費の拡大は、これまでの高い経済成長の成果によって、都市部を中心に購買力を持った中産階級が台頭してきたことの影響が大きい。また、女性の社会進出が進んで、女性の間でお酒を飲む習慣が広がったこともインドのアルコール消費の拡大に拍車をかけている。

  毎年、約2000万人が飲酒可能年齢に達するインドでは、今後も、アルコール飲料のマーケットが速いスピードで拡大していくことが見込まれている。 たとえば、インド合同商工会議所(ASSOCHAM)の調査報告によると、2011年におけるインドの年間アルコール消費量の実績は約67億リットルだったが、今後年率30%のハイスピードで消費が拡大していき、2015年には年間約190億リットルに達する見込みだ。金額ベースでみると、2011年の約5070億ルピーから2015年には2.8倍の約1兆4000億ルピー(約2兆8000億円)へと膨らむ。

 各種の酒類の中でも、インド人はスピリッツなど比較的アルコールの度数の高いお酒を好む傾向があり、とりわけウイスキーの消費量が多い。2011年におけるウイスキーの市場規模は約4050億ルピーに達した。インドのアルコール飲料全体の79.9%がウイスキーで占められている計算だ。インド合同商工会議所は2013年のウイスキーの市場規模を約5400億ルピーと試算している。

輸入ウイスキーを飲み始めたインド富裕層

 なぜウイスキーがこれほど好まれているかといえば、インドでは、英国の植民地時代から徐々に英国産のウイスキーを飲む習慣が広がり、その飲酒習慣が根付くようになったからだ。現状では、インドの人たちが飲むウイスキーのほとんどは国産となっている。インドでは輸入ウイスキーに対する関税が150%(ビールやワインの関税は100%)と高く設定されており、このため地場のウイスキーメーカーが圧倒的な市場シェアを握っているのだ。業界第1位のメーカーだけで6割程度のシェアを占めるという。一部の地場メーカーが醸造するウイスキーは国際的に高い評価を獲得しており、世界各国に輸出するといった動きも出てきている。

 しかしながら、近年では、富裕層などを中心に、スコッチ・ウイスキーなど値段の高い輸入ウイスキーの需要も高まっているので、今後インドでウイスキーの輸入が自由化されれば、スコッチ・ウイスキーや日本のウイスキーのインドへの輸出が大幅に増えることが予想される。こうした事情から、日本のウイスキーメーカーにとってインド市場は将来的にビジネスチャンスが大きいと言えるのだ。

 このように市場規模の拡大が見込まれるインドのウイスキー業界であるが、業界にとっては解決すべき課題もある。ウイスキーメーカーが頭を悩ませているのが偽物ウイスキーの氾濫といった問題だ。

著者プロフィール

エコノミスト

門倉貴史

1971年、神奈川県横須賀市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、銀行系シンクタンク、生保系シンクタンク主任エコノミストを経て、BRICs経済研究所代表に。雑誌・テレビなどメディア出演多数。『ホンマでっか!?』(CX系)でレギュラー評論家として人気を博している。近著に『出世はヨイショが9割』(朝日新聞出版)

公式サイト/門倉貴史のBRICs経済研究所

(Photo by Nicky Pallas via Flickr)

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