ユニクロ敗訴で裁判所公認のブラック企業に|やまもといちろうコラム

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Photo by Taichiro Ueki via flickr
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 やまもといちろうです。表題は少し煽り気味で書いておりますが、これを機にいろんなものが整理されるといいなあと思っておりまして。

 ことのあらましは、文藝春秋が2010年4月に発売した「週刊文春5月6日・13日号」内の記事、「ユニクロ中国『秘密工場』に潜入した!」と、2011年3月に発売した書籍『ユニクロ帝国の光と影』の内容をめぐって、ユニクロが2億2000万円の賠償と書籍の回収を求めたものです。執筆したのは、ジャーナリストの横田増生さん。

 で、このたび一審二審がユニクロの完全敗訴となり、今月9日、ユニクロは上告したものの最高裁判所が上告を退けて判決が確定したことになります。まあ、何と申しますか、文春側もユニクロ側も法務担当者の皆様方や裁判所の判事の皆さん、お疲れ様でございます。

「重要な部分が真実であると(ジャーナリストが)判断したことには相当な理由がある」と最高裁が判断した内容はかなり詳細な描写も含まれていて、安い中国への委託業務が殺人的な多忙を従業員に強いる実態だけでなく、国内の店舗や流通の現場でも長時間労働を強いる、利益優先の経営の現状について裁判所が真実に相当すると判断したことになります。

 去年、判決内容を(嬉しそうに)アップしていた文春の記事に躍動感があって実に素敵なのですが、これって暴いた文春や横田さんが偉大だという話だけでなく、「どう改善していくか」もセットにならないと意味を持たないのもまた事実なんですよね。

週刊文春WEB 本誌が勝訴!ユニクロはやっぱり「ブラック企業」【全文公開】

 社会的に不正義な実態が明らかになり、違法性が指摘されている労働環境があからさまになると、ユニクロとしても対策をしっかりとっていかなければなりません。実際、その対策のため、パートの正社員化や賃金テーブルの公開などで、ユニクロで働く人たちの条件を改善しようという動きがあるのは事実のようです。

「ユニクロ」パート正社員化でブラック体質ひどくなる!?使い捨ては非正規よりむしろ正規

ユニクロの「年収テーブル」公開が話題に 「超絶ブラックと思ってたわ」の声も

 この辺りを見てみると、去年ぐらいからいわゆる「往年の佐川急便シフト」を進めるユニクロの姿が浮き彫りになってきています。大丈夫なのでしょうか。

ユニクロ敗訴 柳井会長の「残業はするな」ただし「生産性は上げろ」はこれからも続くのか?

 そして、高裁で敗訴する半年前には、柳井さん自らがこんなことを語っています。

甘やかして、世界で勝てるのか ファーストリテイリング・柳井正会長が若手教育について語る

 そうなると、やはりメディアでしっかりブラック企業批判をされて、反発はしつつも裁判で負け、経営者自らが現実を把握して受け入れ、会社の方針を転換しなければ、なかなかこの手のブラック企業的な体質は改まらないということになるのでしょうか。

 ネットでは人気のブラック企業大賞においては、どちらかというと法的措置を簡単にとってくる傾向の強い企業がノミネートから外されている現状が強いように見受けられます。

 評判の悪化と敗訴を受けて、ブラック企業批判が高まる中でしっかりと方針転換ができたユニクロ以外にも、問題として槍玉に挙げられるべき企業はたくさんあるのかもしれませんが、ブラック企業批判が単に水に落ちた犬を叩く系統の話で終わらないようにして欲しいと願う次第であります。

 なお、蛇足ですが、ブラック企業批判においては「ブラック批判屋」に近い総会屋ライクな文句付け集団がいるという噂も聞こえてきます。企業に「おたくはブラックですね」と言い寄り、労基署に駆け込まれないために部下をどのように定時で帰らせるのかを幹部研修しませんかと持ちかける手口でありまして、本人たちにどのくらいの悪気があるのかは知りませんが、あまりそういう総会屋めいた真似はやめたほうがいいんじゃないかなあという思いが去来する師走です。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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