【大躍進】共産党議員が語る「解散総選挙後の党内の雰囲気」

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勝利の美酒に酔うヒマはないと党員は語る
勝利の美酒に酔うヒマはないと党員は語る

 先の衆院選で、公示前の8議席から21議席と2倍超となり、小選挙区では18年ぶりの議席確保と躍進ぶりをみせた共産党。

 与党、自民・公明が推し進める経済政策「アベノミクス」が功を奏し、景気は回復基調にあるといわれるものの、ブラック企業問題にみられる労働・雇用問題はますます混迷化を極めている。そんななか、共産党は自民・公明の与党では汲み取れない支持者層に光を照らす唯一の存在として期待されている。昔もいまも、ブレない政策で知られる共産党は、今回の選挙結果をどうみているのか。その実態に迫る。

「勝利の美酒に酔う――そんな余裕はないですね。むしろこれからが大変です。21議席を預からせて頂いてどれだけ結果を残せるか、ですから」

「今回の選挙での勝因と党内の空気は?」と言う筆者の質問にこう返すのは関西のある共産党地方議員だ。急な取材のため共産党の広報の許可を得られなかったことから「共産党の公式見解とは関係のない匿名の一私人」としての登場であることを最初に断っておく。

経済戦争に参戦できない弱者を救済するのが政治

「アベノミクスであれ、何であれ、景気が潤い、市民生活がより豊かなものになるならばそれはそれでいいことなんです。問題はその過程と結果です。いま“勝ち組”“負け組”という言葉が盛んに用いられています。新自由主義経済で“勝ち組”に入れた人はいい。でも、社会的弱者で経済戦争に参戦できない人を見捨ててしまっている社会。それがはたしていい社会なのでしょうか?」

 ここ数年来、人気を誇る安倍総理率いる自民党、橋下大阪市長にみられる維新の党など、日本の社会全体が、全体主義化している傾向をこの共産党地方議員は憂う。

「たとえば大阪市では橋下市長が生活保護受給率を減らせと仰る。たしかに大阪市は生活保護受給率は全国水準でも高い。しかしそれがはたして悪いことなのですかね? 逆に、『大阪市は弱者を決して見捨てることはありません』と胸を張っていいことだと思いませんか?」

 世の中には生まれながらにして強い者もいれば、弱い者もいる。その弱者に手を差し伸べるのが強者の役割であり使命だとこの共産党議員は静かな口調で説く。

「政策とは別の話ですが、維新の党の代表を務めておられる橋下大阪市長の人気が高いですね。彼の言うことは典型的な『ブラック企業経営者』の物言いに思えてならないのですよ。やたらと彼は物事すべてを企業に例えるが、その話の核は、『上司、偉い人には従え!』です。ブラック企業に嵌る人の多くは、そんな“偉い人”に従う真面目な人ばかりです。真面目さゆえに無理をする。結果、低賃金、長時間労働で無理をして体を壊します」

若手党員には公明党へのアレルギーがあまりない

 与党では自民党と連立を組む公明党も、共産党と同じく福祉政策に力を入れており、支持者層も似たものがある。すでに与党入りして長い公明党を共産党の目にはどう映っているのだろうか。

「支持者層は似ているかもしれない。でも考え方が違う。我々は現実を理想に近づけることに力を入れる。公明党さんは理想があって現実を理想に嵌め込むという考え方。ただ共産党でも年配の方は公明党やその支持母体・創価学会へのアレルギーは酷いが、若手の共産党員の間では、公明党へのアレルギーが薄れてきていますね。いまはそういう時代ではありませんから」

 公明党は、国政選挙では戦略を練りに練り、少数精鋭の候補者を立て、組織ぐるみで応援、候補者を当選に導く。対して共産党は基本的には全選挙区に候補者を立てる。そのため得票数次第では没収される供託金の額も莫大なものとなる。もし、この没収される供託金を選挙資金に当て、公明党と同じく候補者を絞り込んで戦えば、さらなる飛躍も予想されるのではないか。

「たしかに共産党内でも、候補者を絞り込み、そこに選挙資金を当てれば当選者数は増えるという人はいます。しかし、それだと小選挙区において選挙民に“選択肢”をご提示できないわけですよ。公明党さんに限らず私の立場で他党のことはお話できませんが、共産党が全選挙区に候補者を立てる。そこに既存政治へのアンチテーゼという意思を示せる。それだけでも意味があると考えます」

 アベノミクスの光と陰。この陰の部分を掬い取る役割が共産党だとこの共産党地方議員は話す。今回、自民・公明の与党の躍進が伝えられる一方で、公示前2倍超をみせた共産党の議席数の意味を、私たちはいま一度考える必要があるのではないだろうか。

(取材・文/秋山謙一郎)

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