【生活の党】小沢一郎と長州力、剛腕からの大転落

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小沢一郎公式サイトと長州力公式サイトより
小沢一郎公式サイトと長州力公式サイトより

「これら国民から選ばれた者が、知性や精神においても選ばれた者であるとはどうしても信じられない!」(注1)

 選挙となるとシニカルに構えたり、冷笑したりする向きもいるが、やはり民主主義の要諦であり、一大イベント。<争点なき選挙>と言われ、投票率も戦後最低の52.66%となった今回の第47回衆院選でも、候補者や支持者の喜怒哀楽が交錯して盛り上がった。盤石・安倍政権の次の一手、民主党党首の落選、維新没落、共産躍進といったところが選挙後の主な話題だが、皆さん誰か忘れちゃあいませんか? そう、ここ25年にわたって日本政界を動かし続けた男、小沢一郎のことを。

「とにかく存在感が無かった。2009年までは120,000票以上取っていた岩手4区で、今回約75,000票とほぼ半減。『生活の党』党代表なのに敗戦会見もせず、さらに男を下げた」(政治部記者)

 結果、生活の党は議席を衆参で4まで減らし、政党要件を失って解散すら現実的に。かつて自民党で経世会を牛耳っていた90年代の初頭。年齢も当選回数も上の宮沢喜一、渡辺美智雄、三塚博を事務所に呼びつけ、「首相候補面接」をした傲慢な勢いはどこへやら、だ。

 この権力者時代の姿と、その後の没落ぶり。ジャンルは違えども、長州力を思い出さずにはいられない。<かませ犬発言>で反体制派選手として人気が出た長州は、紆余曲折を経て新日本プロレスの現場監督に就任。

 オーナー・アントニオ猪木をも駒として扱い、絶対的な権力で我の強いレスラーたちをアゴで使った。小沢同様、まさに<剛腕>を振るっていたのだ。得意技もラリアットだけに(笑)。闘魂三銃士(武藤敬司、橋下真也、蝶野正洋)を使いこなしたあたりも、派閥領袖3人を値踏みした小沢を彷彿とさせる。

……しかし猪木の巻き返しで徐々に権力を剥奪されていき、長州は新日本マットからフェードアウト。子飼いだった馳浩や佐々木健介(注2)、越中詩郎らとも袂を分かち、猪木が引退した年齢を超えた今も糊口をしのぐためかインディ団体のマットに上がり、バラエティ番組で過去の栄光を切り売りしている。

そして誰もいなくなった…小沢と長州「剛腕からの転落」

 こうして<剛腕>2人は得意の絶頂から失意の窮地に追い込まれていった。その過程で長年連れ添ってきた「夫人から告発(注3)」を受けたこと、掲載されたのが「週刊文春」だったことまで共通している。教訓めいた言葉を探せば<奢る平家は久しからず>となり、「仲間や家庭を大切にしなかったから人望が無かった」と評せるだろう。

 しかしショーマニズム的な見方は些か異なる。2人の没落は、裏に回ってフィクサー気取りになったところから始まった、と思うのだ。他の職業はいざ知らず、政治家とプロレスラーは驚くほど似ていて、プレイヤー個人の魅力がすべて。キングメーカーになるのではなく、リングや国会でキングであり続けなければ、現役としての自分をアピールし続けなければ、求心力が失われていく不思議な職業なのだ。

 例えば田中角栄は派閥の長でキングメーカーであったが、それ以上に個人のキャラやストーリーが、他のどの政治家よりも知れわたっていた。団体のオーナーであり現場監督でもあるのに、現役選手の誰よりも強烈なスターだった全盛期の猪木も同様だ。

 小沢は角栄の、長州は猪木の薫陶を受けながら、それぞれのボスがなぜ大衆の支持を受け続けるのかに注目せず、業界内のパワーゲームの強さだけを見習った。ここに大きなミスがあった。政治家もレスラーも、強く掴んで揺さぶらなければならないのは同業者ではなく、<民意>なのだ。

……とはいえ、一時代を間違いなく築いた男たちなのも確か。あまり時間は残されてないだろうが、最後のひと花を期待したい。

(注1)選挙への批評…アドルフ・ヒトラーの言葉。
(注2)佐々木健介…健介が貸した500万円の返済を巡り、鬼嫁(北斗晶)も参戦して泥沼の仲に
(注3)夫人からの告発…「長州は夫人へのDV」、「小沢は震災後に放射能が怖くて地元に帰らなかったこと」等が、批判された

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。DMMニュースではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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