中国の結婚式は酒やタバコが10日間続く”死の宴”だった

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ご馳走がエンドレスに提供され続けた
ご馳走がエンドレスに提供され続けた

 前回は、筆者が招かれ中国の東北部(旧満州)、黒竜江省ハルビン市から約300キロの地方都市・方正県に滞在、偽装結婚妻の“産地”、そして淳暴力団指定された凶悪暴走族・OB集団「怒羅権」の故郷で知り合いの結婚式に出席するまでの話を書いた。

「10日間続く死の宴」――旧・満州のおそるべき結婚式の実態(前編)

 その席で、大げさでなく死にそうになった体験をここに報告したい。

マフィアから医者、公安まで混在。それが一族

 早朝、親戚の家に集合した後、昼になると、近所のレストランにみなでぞろぞろと移動。毎回30~50人ほどの親戚が顔をそろえる。円卓にはすでに”ご馳走”が並んでいる。その食材がすごい。カエル、ドジョウ、いもむし、豚肉、羊肉、犬肉、猪肉、そして謎の魚――これらを炒めたり、煮たり、蒸したりした料理がずらりと並ぶ。

 結婚式を主催する家の父親がいう。

「いつもこんなものを食べてるわけじゃない。結婚式とか特別の日だけのご馳走だ。さあ、たくさん食べてくれ」

 卓を囲む面々の顔ぶれもすごい。

「あいつは医者だ。その隣は農民グループ。その正面の3人はマフィアだ。その横の男は工場労働者で先日、ベトナムから嫁を買ってきたばかりの新婚さんだ。で、あの貧弱な奴は公安(警察)に勤めている。みんな親戚だよ」

 中国東北部では「一族」が絶対のようだ。一族の中にはさまざまな人間がいる。ヤクザも、農民も、警察官も、一族のなかでは平等である。東北の一族はすべてを飲み込む。ごった煮だ。

白酒責めに煙草責め…終わりなき無間地獄のおもてなし

 そして、こちらの宴でもっとも恐ろしいのが「白酒」だった。アルコール度数は38度~60度。この一族の場合、基本的に50度以上の白酒しか飲まない。

 食事中、誰かと目が合うと、相手は筆者の目を射るように見つめて、グラスを持ち上げる。「さあ、飲め」という合図だ。ちょっとだけ口をつけるなどもってのほか。ひとたび、グラスに手をつけたら、一息に飲み干さなければ「仲間」と認められない。その圧力たるや、尋常ではない。

 結婚式を主催する家の父親はいわば幹事であって、宴の間中、各円卓を周って、みなを鼓舞する。

「おい、そこ、飲みが足りないぞ。こら、そこのやつら、もっと食え」

 白酒攻めと同時に、煙草攻めもある。一服して、火を消したところを誰かに見られたら最後、すかさず煙草の箱を差し出される。これも断るわけにはいかない。筆者は宴の3時間で、確実に2箱分の煙草を毎回吸わされた。宴のたびに白酒を何度も一気させられ、最後は記憶を失った。知らぬ間に失禁していたことも2度ほどあった。こうした宴が10日間も続いた。

 結婚式自体も400人を超える招待客があり、豪華そのもの。プロの歌手が歌い、すべての円卓には豚の頭が並んだ。式の後、残った料理をビニール袋につめて持ち帰る貧農の姿も見られた。

 凄まじい格差社会だが、その格差を「一族」が埋める。「国はまったく信用してない。信用できるのは一族だけだ」。多くの人々が言っていた言葉が胸に沁みた――。

(取材・文/小林靖樹)
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